オイシックス代表取締役社長 髙島宏平
お客さまの期待値を超える商品・サービスを提供し、ナチュラル&オーガニック市場をさらに拡大する!
流通業は十分にマーケティングできていない
──オイシックスが切り拓いてきた「ナチュラル&オーガニック」食品の市場はだんだんと広がってきていますが、既存の食品スーパー(SM)では取り扱いはあるものの、あまりうまくいっていないのが現状です。
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髙島 そうですね。
ナチュラル&オーガニックのマーケット自体はすごく成長しています。ただし、市場自体はまだまだ小さい。食品全体に占めるオーガニック食品の割合は米国が4%である一方、日本は0.2%ほどです。
米国ではSMチェーンのホールフーズマーケットがオーガニックの市場をつくりだしました。その後、トレーダージョーズやウォルマートが追随してマーケットが大きくなっていったという経緯があります。
それまでは、日本の場合もそうですが、既成の価値観に縛られない思想を持った人たちがオーガニック食品の市場を担っていました。ホールフーズマーケットは、従来からの生産者支援のスタイルから、マーケティング発想のスタイルに変えて新たな市場をつくり出したのです。
そういった意味では、日本のオーガニック市場がまだ大きく広がっていないのは、市場のニーズが足りないからではなく、われわれ流通業が十分にマーケティングできていないことが大きいと思います。お客さまに「通常の野菜とオーガニック野菜のどちらがいいですか?」と聞けば、大多数の人が「オーガニック」と答えるはずです。しかし、「近くで売っていない」「宅配には『セット』商品しかない」「値段が高い」など、興味はあるものの買えない理由がたくさんあるのです。これはわれわれ流通業次第で解決できる問題なのです。
食品のEコマース(電子商取引)とナチュラル&オーガニックの食品マーケットは、当社の売上高の数十倍、つまり数千億円のオポチュニティ(成長機会)があります。それをしっかりとつくるのがこれからのわれわれのミッションだと考えています。
──ナチュラル&オーガニック食品はインターネット販売と親和性があると考えていますか?
髙島 どのようにマーケットをつくってきたのかを振り返ると、われわれは「インターネットの力」を上手に使ってきたということが大きいと思います。インターネットを利用すれば、お客さまによいものの理由を説明して販売することができます。つまり、なぜこの商品がいいのかをお客さまの左脳(思考・論理)にお伝えし、販売していくという方法です。
これに対して米国のホールフーズマーケットは、ビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)をはじめとした右脳(知覚・感性)へのアプローチでオーガニック食品のよさをお客さまに伝えたのです。
インターネット販売とリアル店舗では、バリュー(価値)の伝わり方が少し異なると思います。リアル店舗では売れないものを当社が多く販売できるのは、左脳に対して説明していることが大きいと思います。
ただ築地市場やスペインのサン・ジョゼップ(ボケリア)市場を見ると、「何かいいよね」という右脳へのアプローチが多いように思いますので、われわれは、そのような方法も身に付けたいと考えています。