ドラッグストア業界最大手のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが、経営統合へ動きだした。主導するのは、ウエルシアの親会社イオンで、これまでスーパーなど数々のM&A(合併・買収)で巨大流通グループを築いた。売上高2兆円規模の巨大ドラッグストア誕生で、業界では再編の機運が高まりそうだ。
「統合により最も大きなスケールメリットを獲得する。アジアで存在感のある企業になる」。イオンの吉田昭夫社長は2月28日の記者会見で、意義をこう強調した。統合で全国5000超の店舗網を形成し、売り上げ規模は業界3位のマツキヨココカラ&カンパニー(9512億円)を大きく引き離す。
ドラッグストア業界は、調剤や医薬品のもうけを原資に食品を安く売るスタイルで急成長し、スーパーなど他業態からシェアを奪う勝ち組とされてきた。しかし近年、市場は飽和傾向で「低成長期に入っている」(吉田社長)。人件費や物流費も高騰し、小規模では収益を見込みづらい。
ウエルシアとツルハは、物流や商品調達、プライベートブランド商品開発などで協力し、大幅なコスト削減と収益力強化を目指す。成長を見込める中国や東南アジアで店舗を拡大する絵も描く。
日本チェーンドラッグストア協会の統計によると、2022年度の業界売上高は推定で8兆7134億円で、350社以上がひしめいている。ほぼ3社に集約されたコンビニ業界のような大規模再編は起きていないが、21年のマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの統合が風向きを変えた。ウエルシアとツルハが相乗効果を出せれば、再編の流れができる可能性がある。
ただ、UBS証券の風早隆弘氏は「スケールメリットを収益性の改善につなげられる会社は少ない」と指摘する。イオンが主導した地域スーパー連合のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの業績がさえないという例もあり、業界関係者からは「まずはお手並み拝見」との声が上がっている。