「稼ぐ力」の変化鮮明=昨年度、経常黒字が半減
財務省が11日発表した2022年度の国際収支(速報値)は、経常収支の黒字額が前年度の半分以下まで縮小した。貿易赤字が過去最大に膨らんだことが主因。海外子会社からの配当や利子収入などを示す第1次所得収支の黒字が穴埋めしたが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高や円安進行を背景に、日本の「稼ぐ力」の変化が一段と鮮明になった。
昨年度、海外とのモノやサービスの取引、投資収益などの状況を示す経常収支の黒字は前年度比54.2%減の9兆2256億円にとどまった。エネルギー資源の大半を輸入に依存する日本にとって、記録的な円安と燃料高が貿易収支に大きく影響。14年度以来、8年ぶりに10兆円を下回った。当時も資源高に加え、東日本大震災後の原発稼働停止により火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの輸入が増え、貿易赤字が深刻化していた。
貿易収支は災害や紛争などの外的要因に左右されて浮き沈みが激しい一方、第1次所得収支は着実に黒字額を拡大している。22年度は、日本企業が海外子会社から受け取る配当などの「直接投資収益」が増え、過去最大の黒字額を記録した。
かつての円高局面以降、自動車メーカーなどが生産拠点の海外移転を進め、日本の「稼ぐ力」は、第1次所得収支の黒字が貿易赤字を補う構図に変化した。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「国内で生産して輸出する方が雇用面などにはプラスに働く」としつつ、「人口減少が続き、海外で稼ぐ傾向はやむを得ない側面がある」と分析した。