経常黒字6割減=資源高・円安で「稼ぐ力」低調―今年度上期
財務省が9日発表した2022年度上半期(4~9月)の経常収支の黒字額は、前年同期比58.6%減の4兆8458億円だった。ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰や円安の加速によって、貿易収支が大幅な赤字に転じたことが響いた。貿易赤字の拡大に歯止めがかからなければ、国の「稼ぐ力」を意味する経常収支の低迷が当面続きそうだ。
経常黒字額は、東日本大震災で原発が稼働停止し、火力発電用の液化天然ガス(LNG)輸入が増えていた14年度上半期以来、8年ぶりの低水準だった。
輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9兆2334億円の巨額赤字(前年同期は8912億円の黒字)に陥った。原油や石炭、LNGなどの高騰や円安で輸入額が47.1%増の58兆7556億円と大きく膨らんだ。円安は輸出企業には追い風となり、自動車の輸出なども好調だったが、輸出額は21.3%増の49兆5222億円にとどまり、輸入額の伸びに追いつかなかった。
海外子会社からの配当や利子収入などを示す第1次所得収支の黒字は円安で膨らみ、25.2%増の18兆2332億円と過去最高を更新。拡大した貿易赤字を補う構図となっている。しかし、このまま貿易赤字の拡大基調が続けば、経常収支も低水準にとどまる恐れがある。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「経常収支の改善は見込みにくく、下半期も低水準の黒字が続く」と分析。貿易赤字についても、「原油価格がピークより落ち着いているため、赤字幅は縮小するが、大幅な赤字は変わらない」と予想する。
◇22年度上半期の国際収支
22年度上半期 前年同期比%
経常収支 48,458 ▲58.6
貿易・サービス収支 ▲123,973 ―
貿易収支 ▲92,334 ―
輸 出 495,222 21.3
輸 入 587,556 47.1
サービス収支 ▲31,639 ―
第1次所得収支 182,332 25.2
第2次所得収支 ▲9,901 ―
(注)単位億円。▲は赤字または減、―は比較できず