オムニチャネルの上位概念? 顧客体験を一新する「ユニファイドコマース」とは何か
ユニファイドコマースを機能されるためのポイント
ただその前提として必要なのは、リアルタイムの在庫連携など基幹システムの更新だ。
望月氏は「国内小売企業はITインフラ投資が欧米に比べて圧倒的に少ない。ユニクロや無印良品のようにデジタルの責任者や役員がいて、『組織全体をデジタル中心に変えていく』という意思決定をすることが必要だ」と強調する。ただ、「近年は会員情報や在庫情報の基盤を構築した小売業が徐々に増えており、この中で成功事例が出てくれば、意思決定もしやすくなるだろう」とも予想する。
ユニファイドコマースがきちんと機能するためには、以下の3つが重要であるという。
- 会員基盤と在庫基盤の整備
- 店舗受け取りなどオフラインとの連携
- アプリが消費者のスマートフォンに存在し、それを見に行く習慣がある
また顧客接点のハブがアプリになり、お客の動向やさまざまな行動履歴を企業が理解できなくてはならない。たとえばユニクロでは上記のポイントに加え、店舗とオンラインでの購入履歴がサイズも含めアプリに格納され、ひも付けされている点を望月氏は評価している。
食品スーパーやドラッグストアへの活用は
では嗜好性が強いアパレルではなく、食品スーパーやドラッグストアではユニファイドコマースは効果を上げられるのか。
望月氏は「食品スーパーはレシピと食品との買い合わせが鍵になり、お客の趣味趣向とひも付けること。ドラッグストアは基本的にはアマゾンのように購入したシャンプーなど消耗品が切れそうになったら、そのタイミングで通知を送り、さらに割引している他の商品も紹介するといった形でユニファイドコマースを実現できるだろう」と述べている。
関連する注目技術として望月氏はリテールメディアを挙げる。小売業は購買情報という最も本質的で価値のある情報を持てるし、最近はリテールメディアも以前よりかなり安いコストで構築できるようになっている。そのためにも、オンラインとオフラインを統合し、何を購入したかというデータを取得しておくことが重要だという。
ユニファイドコマースの広がりによって、「集客・コンバージョン(成約)率・買い上げ点数の向上」が実現できる。SHEIN(シーイン)やTemu(ティームー)などの中国発EC企業がマーケットを席巻するなか、国内企業は売れる商品が何かをデータで理解すること、高品質なものづくり、サプライチェーン全体を効率化することが課題だと望月氏は言う。
アパレルを中心とした小売企業にとどまることなく、食品スーパーやドラッグストアにおいても、ユニファイドコマースを実現するためのチャンスは到来している。AIの活用を含め、業界全体が大きく飛躍する機会が訪れている。