「デジタル化と小売業の未来」#13 若者の間で広まる「ストップウォッチショッピング」「ウィッシュリストショッピング」とは何か?

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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EC利用が拡大するなか、生活圏に最も近い場所に店舗を構えるコンビニエンスストアやドラッグストアは高い業績を上げています。ほかにも、生活圏に近い場所に実店舗を展開し、店舗受け取りや返品対応を徹底するなど、オンライン・オフラインを含めた事業全体の伸びしろが見えてきています。今回はそんな変化の真っただ中にある消費活動に対応するために押さえておきたいポイントをご紹介しましょう。

ViewApart/istock
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買物は一瞬で済むように

 私が出版した書籍では、デジタル時代における6つのポイントをご紹介しています。その中でもとくに重要なポイントとなっているテーマが、「買物プロセスの面倒くささが際立ってきている」という点です。私はこうしたプロセスを省く新たな買物方法を「ストップウォッチショッピング」と呼んでいますが、コロナ禍が本格化する前に弊社で統計を取った際にも面白いデータが出ています。

株式会社いつも調べ「生活者の買い物実態調査」
株式会社いつも調べ「生活者の買い物実態調査」

 「ここ数年お店に行く頻度が減ったか」という質問に対して、かなり多くの方が「頻度が減った」と答えています。その理由を聞くと、「レジに並ぶのが面倒」「店員の接客が面倒」「店内で商品を探すのが面倒」という声が多くなっています。

 デジタルでの買物体験が増えたことで、「買物は一瞬で済む」ということが当たり前になり、とくに若者の間でこのような傾向が顕著に表れています。これはスマホの普及による影響が大きく、コロナ以前から、わざわざレジに並んだり、店員と会話しながら買ったりといった「買物のプロセス」を避けたいと思う人が多くなっているのです。

 ストップウォッチショッピングは、「欲しい・必要だと思った瞬間にそれを買う必要があるということを忘れたい」という消費者心理に起因しています。ネットで注文を済ませてしまえば翌日には商品が届いてしまうため、購入のタスクを抱えておく必要はありません。デジタルが進むなかでは、これが普通の消費行動となっているのです。

 

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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