Uber Eatsが全国展開に本腰の「ピック・パック・ペイ」 急拡大の理由と今後の展望とは
現場の課題に対応し、細かく作業改善
PPPを提供するウーバーイーツでは、導入店舗から日々寄せられる現場の声をもとに、サービス品質の向上に向けた改善を重ねている。たとえば、配達員が冷蔵品をピックアップする際に業務用アプリ上で消費・賞味期限の確認を促す機能を設けたり、冷凍食品を最後にピッキングするようリストの表示順を工夫するなど、店舗と配達員の双方がよりスムーズに業務を行えるような対応を進めている。

こうした取り組みはPPPに限らず、食料品や日用品を対象とした即時配送サービス全体においても活用されている。
PPPを通じた注文で多いのは、飲料、酒類、菓子類など、ちょっとした買い足しニーズに対応した商品だが、生鮮品や総菜の注文も一定の割合を占めている。そのため、「まいばすけっと」のような小型店舗における売れ筋と近い傾向がみられる。また、ネットスーパーでは米や水などの重量物やトイレットペーパーといったかさばる商品の注文が多い傾向があるが、即時配送サービスではそうした利用に偏ることは少なく、日常的な少量買いに使われるケースが多い。そのため、平均客単価や買い上げ点数も、一般的な食品スーパーでの購買と近い水準にある。
「PPPのユーザーにとってのバリュープロポジション(価値提案)は、今欲しいものを直ちに届けてくれるという点にある。私たちは、定番品に加えて季節商品なども含め、あらゆる商品を、すぐにお届けできる体制を築くことが、私たちの使命だと考えている」と野村氏は話す。
小売店とのデータ連携をさらに緊密に
今後、ウーバーイーツはPPPにおいてサービス品質とデータ連携の精度向上に注力する方針だ。中でも課題となるのが、小売店舗側の情報システム整備の遅れである。現在、通路配置(ロケーションデータ)や商品マスター、商品画像、リアルタイム在庫といった情報を、外部のパートナー企業とデータ連携できる小売企業は限られている。
たとえば、ロケーションデータがあれば、配達パートナーはアプリ上で、商品が店舗内のどの通路・どの棚にあるのかを事前に把握できる。その結果、ピックアップにかかる時間を短縮でき、滞留時間の削減につながる。
また、ユーザーが商品を注文した際にアプリで「在庫あり」と表示されていれば、配達パートナーは売場で確実に商品を見つけることができる。逆に、すでに在庫が切れている商品が「在庫あり」と誤表示されると、店舗で無駄な捜索が発生し、ユーザーへの提供にも支障が出る。リアルタイムな在庫情報が整備されていれば、こうしたミスマッチを回避できる。
野村氏は「今後は、小売店に直接データ提供を依頼するだけでなく、各チェーンの本部や、店舗が利用している基幹システムのベンダーとも連携し、データ連携の精度を高めていけるよう支援していきたい」と話す。
PPPを含めた食料品・日用品の即時配送サービス全体としては、今後さらに対象となる店舗業態の幅を広げていく考えだ。現時点では食品スーパーやドラッグストア、酒販店が中心だが、ディスカウントストアやホームセンターなど、より多様な業態との連携を視野に入れている。とくに、ペット用品など、日常生活の中で突発的に必要になることが多い商品を扱う店舗との連携には一定のニーズがあると見ている。
Uber Eats Japanでは、担当部署の名称を「グロサリー・リテール事業部」から「リテール事業部」へと変更した。「グロサリーも重要なカテゴリーだが、今後はリテール(小売)全般が対象だと考えている」と野村氏は話す。カテゴリーに縛られず、小売全体に広がる配送網の構築を見据えている。







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