「リサイクル通信」の推計によると、2021年のリユース業界の市場規模は約2.7兆円と、10年前の2倍以上に拡大している。そのうち、カテゴリー別で最大の内訳を占めるのが「衣料・服飾品」で、対前年度比14.4%増の4,587億円と大きく伸長している。
SDGsの追い風を受けフリマアプリや店舗型のリユースビジネスの好調も目立つが、一方で、ECにおいてファッションのリユースをけん引してきたのがZOZO(千葉県/澤田宏太郎社長)の「ZOZOUSED」だ。アイテムを手放すことで新しいアイテムを安く購入できる「買い替え割」など、独自の取り組みでリユース市場において一定の地位を確立し、直近の2年間では2ケタ成長を続けている。
2012年に運営を開始してから10周年の節目を迎えたZOZOUSED。その歩みと好調の理由を、ZOZO マーケティング本部 USED事業部ディレクターの島村龍也氏に聞いた。
「新品」と「古着」が共存する唯一無二のプラットフォーム
ZOZO の2022年度(2023年3月期決算)におけるユーズド事業の商品取扱高は160億4600万円と、対前年度比19.3%増加した。2021年度(同15.7%増)に続き2ケタ成長を続けており、コロナ禍に入る以前の水準(2019年度/157.5億円)をも上回った。
好調の理由として「ZOZOTOWN全体の成長に引っ張られている要因が大きい」とZOZOマーケティング本部 USED事業部ディレクターの島村龍也氏は語る。確かにZOZOTOWN事業全体で見ると、商品取扱高は4355億4200万円とコロナ禍以前(2019年度/3248億4600万円)から34.1%と大きく増加。コロナ禍を契機にECが人々の購買様式の中に定着したことで、大きく成長を果たした。
ZOZOTOWN全体の成長に引っ張られている、と島村氏が言うのは、ZOZOUSEDはこのZOZOTOWN上のユーズドカテゴリーとして運営されているためだ。つまり、同じプラットフォーム上に新品と古着のアイテムが“共存”しているのだ。
サイトを開くと、カテゴリーごとに「新品」と「古着」のタブが並び、ユーザーはそれぞれを見比べながらほしいアイテムを選ぶことができる。この一次流通と二次流通が一体化したアパレルプラットフォームは、他に類を見ないZOZOならではの特徴だ。
進化を続ける独自のサービス「買い替え割」
この特徴を生かしたUSED事業も行っているZOZOならではのサービスが「買い替え割」だ。買い替え割とは、カートに入れた商品の支払い手続きの際に、ユーザーが過去にZOZOで購入した商品を下取りに出すことで、その下取り分を注文金額から値引きしてくれるものだ。
ユーザーにとっては不要となったアイテムを手放すことで新品を安価で入手できる。同時に、プラットフォームを運営するZOZO側にとっても、ユーズドアイテムの確保と、ユーザーに対する継続的な購買の動機づけを同時に実現できる。いわばZOZOのプラットフォーム内で商品が循環するエコシステムを形成しており、これがECサイトとしてのZOZOの優位性を高めているのだ。
この買い替え割をさらに進化させたサービスとして、2019年には「いつでも買い替え割」をスタート。商品を下取りに出すと、下取り額に応じて、その場でZOZOポイントが利用者に付与されるので、好きなタイミングでポイントを利用することができる。ユーザーに対しては、サイトの買取り価格をチェックしながら、商品の価値が高いタイミングで手放すことができるという新たな顧客体験ももたらしている。
AI導入によって売買の予測精度が向上
一次流通と二次流通が一体となったプラットフォーム運営によって、「一人のお客さまに対してさまざまなデータを紐づけられるようになった」と島村氏は語る。つまり、新品と古着、さらには購入と売却も含めた行動履歴を1つのユーザーIDで捕捉・管理することができ、より高い解像度でユーザーの行動特性を把握することができている。
近年、ZOZOではこのユーザー情報を活用したAIの行動解析に力を入れている。
「AIの機械学習によって、一人のユーザーにどの価格を提示すれば買取りにつながりやすいか、どういう商品をレコメンドすれば購買につながりやすいか、といった予測の精度が高まっている」(島村氏)
AI導入後、的中率(ZOZOUSEDでの商品の売却価格に対して予測価格が的中した確率)は導入前の1.5倍に向上したという。また、買い替え割における値づけの精度も高まり、ユーザーからの買取り価格は25~35%向上したという。
2019年にはヤフーを傘下に持つZホールディングスの子会社となったことも話題になったZOZO。そのZホールディングスでは「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」と宣言しており、社内AI人材を育成するプログラム「Z AIアカデミア」を展開するなどAIを経営の柱に据えている。そのZホールディングスグループとのシナジーも、AI注力の背景にはあるだろう。
サステナビリティは「楽しさ」から生まれる
2005年にファッション専門オークションサイトとして創業した「クラウンジュエル」をZOZOが買収し、ZOZOUSEDがオープンしたのが2012年。以来、ZOZOグループの子会社としてリユース事業を地道に拡大し続けてきた。
「大事にしてきたのは、ユーザーの皆さまにファッションを自由に楽しんでもらいたいということ」
クラウンジュエル時代から一貫してユーズド事業に携わってきた島村氏はこう強調する。買い替え割などのユニークなサービスも、AIの導入も、ユーザーに対する体験価値の向上を考え続けてきた中で生まれたものだ。
近年ではSDGsのトレンドやフリマアプリなどCtoC(個人間取引)市場の成長もあり、リユースがますます身近な存在になりつつある。「今の若いユーザーはもはや、手放す前提でモノを購入するようになっている」(島村氏)。新品と古着の双方のアイテムがシームレスに展開されるZOZOは、その新たな購買行動にフィットしているといえるだろう。
ZOZOグループが2021年に発表した「サステナビリティステートメント」でも、重点取り組みの一つに「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」を掲げている。ZOZOUSEDはその重点取り組みの中核事業に位置づけられ、グループ内でも欠かせないピースになっている。
「これからも『ユーザーに気軽にファッションを楽しんでもらいたい』という基本的な軸は変えずに、買い替え割をはじめとするサービスを少しずつ改善しながら顧客体験をつくり込んでいきたい」
島村氏はこう語る。SDGsの言葉が登場する以前からリユースビジネスに取り組み、アイテムを「購入する」だけでなく「手放す」も含めた循環型ファッションを確立してきたZOZOUSED。ユーザーにとっての「楽しさ」を追求し続けることで、これからもファッションにおける新しいサステナビリティの形を私たちに見せてくれるだろう。