事業本部制から機能本部制へ 大規模な組織改編を実施したビームスのEC強化戦略とは
チャット接客は、顧客からも、スタッフからも好評
一方で、同社には、国内約160店舗のリアル店舗、約2000人の店舗スタッフという“資産”がある。そうした資産をECに生かす「OMO」こそ、他社と差別化できる武器というのが、ビームスの考え方だ。
「セレクトショップとして45年以上の実績があるリアル店舗は、ファッションの情報発信に強いという自負がある。ECは便利だが、当社の店舗で接客を受けるような感動を与えるにはまだまだ工夫が必要だ。そこで、リアル店舗のリソースを活用し、ECにもビームスならではの感動を加えたいと考えた。反対に、ECを活用して、リアル店舗の利便性も高めたい」(同)
OMOの具体的な取組みとしては、「オムニスタイルコンサルタント」などが挙げられるが、最近では、「チャット接客」にも着手した。
「EC上のお客さまとのチャットを使ったQ&Aについても、通常だとオペレーターが回答すると思うが、当社は商品に精通したリアル店舗のスタッフがお客さまに対応するようにした。そのほうが、お客さまに対して、厚みのある答えができる」(同)
2021年11月22日~12月25日、コロナ禍で店舗スタッフが参加しやすかったこと、またクリスマスギフトなどの年末需要の高まりを受けて、チャット接客のトライアルを行った。約30のレーベルを対象に毎日約20人、交代で延べ約100人の担当スタッフが、顧客対応を実施した。
例えば、「こどもビームス」で取り扱う学習デスクの機能についての質問には、担当スタッフが店頭の在庫を画面で見せながら説明し、顧客から「わかりやすかった」と褒められた。また、ニットコーディネートについての質問には、スタイリング提案の画像をアップしたところ、「近くにいたから」と、顧客が来店して買い物をしてくれたという。
「店舗スタッフからも好評で、ECの価値を見直すきっかけにもなった」と、渡部氏は強調する。「ネットでもお客さまの顔が見える」「ECでお客さまが何に悩んだり、迷ったりしているのか、具体的に把握できた」といったスタッフからの声もあった。
将来的には、カスタマーエンゲージメント本部内に専任スタッフを配置した接客チャットサービスの本格始動も計画する。「デジタルを活用すれば、いつでも、どこでもお客さまとつながることができる。店舗スタッフが自宅からリモートワークで参加するなど、働き方の幅も広がるかもしれない。OMOで、リアル店舗も活性化させたい」と、渡部氏は意気込む。