「バロー経済圏」構築をめざす! スーパー、ドラッグ、HCを抱えるバローHDのDX戦略とは

文:松岡 由希子 (フリーランスライター)
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バローホールディングス(岐阜県/田代正美社長:以下バローHD)は、2030年3月期までの中長期経営方針「バローグループ・ビジョン2030」において「バローグループの商品・サービス・決済で地域を便利に豊かにつなぐ『バロー経済圏』の構築と商品力で選ばれる『デスティネーション・カンパニー』の実現」を目指し、顧客接点の強化と製造小売業(SPA)としてのビジネスモデルへの進化に取り組んでいる。

コミュニケーションの加速こそがDXの本質

バローHDのデスティネーション・カンパニー構想
バローHDのデスティネーション・カンパニー構想

 バローHDはこの新たなビジョンをベースとした24年3月期までの新中期経営計画では、戦略目標「コネクト2030〜商品・顧客・社会を繋ぐ」のもと、店舗とECを通じた顧客接点の拡大・重層化と情報連携による効率的なサプライチェーンの構築をすすめている。バローHD流通技術本部長兼システム部長の小池孝幸氏は、これらの実現に向けた課題として「バローグループとお客さま、販売部門と製造部門、店舗と本部のそれぞれにおいてコミュニケーションの加速が不可欠だ」と述べ、「コミュニケーションの加速こそ、バローグループにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の本質」と定義づけている。

 消費者と直接接点を持つ小売業は、消費者の嗜好やニーズを起点にバリューチェーンを構築する「デマンドチェーン」のハブとして、その存在価値が高まってきた。食品スーパー(SM)、ドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)といった幅広い業態で小売業を展開するバローHDでは、メーカー、生産者、サプライヤーらの要となり、商品力で消費者から選ばれる「デスティネーション・カンパニー」の実現に向けた基盤づくりをすすめている。

バローHD流通技術本部長兼システム部長の小池孝幸氏
バローHD流通技術本部長兼システム部長の小池孝幸氏

21年7月に新基幹システムを稼働

 まず、グループ全体でネットワークを構築し、調達・製造部門から販売部門まで、サプライチェーンに関与するグループ各社が情報やデータをフラットに共有し合うための基盤として、21年7月に新基幹システムへの切り替えを完了。さらに、サプライチェーン上の情報を連携させる「データHUB(ハブ)」の設計にも着手した。21年度末までにグループ会社の戦略情報システムの一部と「データHUB」を試験的に連携させ、その効果を検証し、一連の成果をグループ内で共有する計画だ。

 バローHDは、積極的な出店やM&A(合併・買収)を通じて企業規模を急成長させてきた。店舗数は21年6月末時点で1236店にまで増加しており、以前の小規模ドミナント運営だったときと比べて当然スーパーバイザー(SV)やエリアマネージャーが店舗に出向いて現場で指導や助言をする頻度も低下しつつある。そこで、店舗の現場と本部を直接つなぐコミュニケーションツールとしてスマートデバイスを店舗に導入しつつある。本部からの作業指示や情報がタイムラグなく店舗の現場へダイレクトに届けられることで、現場からのレスポンスも大幅に向上させることを狙う。他にも従来のテキストベースから動画や画像を織り交ぜた直観的なマニュアルに刷新するなど、研修やトレーニングの改善にも店舗のスマートデバイスを積極的に活用していく構想だ。

 バローHDでは、自社のプリペイド式電子マネー「LuVit(ルビット)」と公式スマホアプリ「ルビットアプリ」を顧客とのポータルと位置づけ、顧客情報や購買履歴を活用したダイレクトマーケティングに取り組んでいる。「LuVit」の決済比率はSMのバローで24%を超え、「ルビットアプリ」の会員数は21年3月末時点で32万5000人にまで拡大している。

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松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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