チェーンストアとは?チェーンストアの理論から種類、メリット・デメリットをわかりやすく解説!
ビジネスを幅広く展開できる経営手法の一つに、チェーンストアがある。日本ではコンビニエンスストアやファミリーレストランなどがそれに該当するが、この言葉には馴染みがない人も多いのではないだろうか。
本記事では、まずチェーンストアの概要や種類を解説する。そのうえで、チェーンストアの戦略を用いた場合のメリットやデメリットを解説していきたい。この機会にぜひチェーンストアの理解を深めよう。
チェーンストアとは
チェーンストアとは、チェーンストア理論に基づいて生まれた経営手法で、企業が複数の店舗を本部の管理下で運営する経営形態を指す。
チェーンストアは、基本的にマスマーチャンダイジングのビジネス手法を用いる。この手法は、不特定多数の顧客に対し、いかに効果的かつ効率的に多くの商品を売るかを重視するものである。
現在日本では、小売店やサービス業、飲食店など多種多様な企業がチェーンストアを展開している。
チェーンストア理論
チェーンストア理論は元々、アメリカで生まれた経営手法だ。あらゆる企業活動を本社に集約させ、店舗はオペレーションに専念することで、経営効率の最大化を目指す。この理論を活用すれば、仕入れをコントロールし、顧客ニーズにマッチした商品や適正なコスト、品質の維持などが実現する。
日本でチェーンストアを広めた立役者は、経営コンサルタントの渥美俊一氏だ。従来、卸売業やメーカーによる商品価格の一方的な決定と押し付けによって、日本市場は硬直状態にあった。
しかし渥美氏がチェーンストア理論の確立と普及に尽力したことで、日本の市場は大きく変わった。大型店舗の展開を通した圧倒的な調達力や店舗ごとの統一性、メーカーの押し付け価格に対する価格交渉が可能になり、現在は日本でもチェーンストア理論が普及し、一般化している。
スーパーマーケットとの違い
スーパーマーケットは「マーケットを超える」という意味で、コンビニエンスストアや百貨店と同じ、小売業態の一種である。
経済産業省によって「スーパーマーケット」は、以下のように定義されている。
- 販売額の70%以上が食料品
- 売り場面積が250平方メートル以上
- セルフサービス方式 など
一方でチェーンストアとは、多店舗経営を実現するビジネスモデルの一種である。つまりは、両者の違いは業態か、ビジネスモデルかということだ。同一店名のスーパーマーケットをチェーンストアとして全国、あるいは特定の地方に展開する例もある。
チェーンストアの種類
チェーンストアの種類は、以下の3つに分けられる。
- ローカルチェーン
- リージョナルチェーン
- ナショナルチェーン
ローカルチェーン
ローカルチェーンとは、1つの商勢圏(ある地域における、チェーンの勢力範囲)に11店舗以上を展開しているチェーンストアを指す。「ローカル」といわれているが、エリアや都心からの距離などは関係ない。出店場所は必ずしも地方とは限らず、東京都内のみに出店している場合も、ローカルチェーンと呼ばれている。
1つの商勢圏で多くの店舗を展開するため、知名度が高くなり、物流や販売促進の効率化、ブランド力向上などが期待できる。ブランドのチェーン展開を検討する際には、まずこの手法で小さくスタートするのが一般的な手法となる。
リージョナルチェーン
リージョナルチェーンとは、2つ以上の商勢圏に店舗を展開しているチェーンストアだ。商勢圏を選択・限定して店舗を出店できるため、地域の需要に合わせた運営が可能になる。
地域を絞ると店舗密度や知名度が高くなるだけでなく、地域の消費動向に合わせた品ぞろえができ、マーケティング活動を効果的に進められる。ローカルチェーンで成功した場合の、次のステップとしてさらに事業を拡大させたい企業にとっては、リージョナルチェーンは最適な商業戦略だ。
ナショナルチェーン
ナショナルチェーンとは、2つ以上のリージョナルチェーンを全国各地で店舗展開するチェーンストアだ。
リージョナルチェーンより広範囲の店舗出店によって知名度が上がると、企業に対する信頼感や安心感も高まりやすくなるため、多くの顧客を獲得できる特徴がある。
ただし、ナショナルチェーンは全国的な経営を目指す分、豊富な資金が必要だ。また、人材教育や円滑な経営の仕組みづくりなどに対しても、長期的な視野と効率的な運営が求められる。
チェーンストア方式の種類
チェーンストアの経営形態として、以下の3つの方式が挙げられる。
- コーポレートチェーン(CC)
- フランチャイズチェーン(FC)
- ボランタリーチェーン(VC)
コーポレートチェーン(CC)
コーポレートチェーン(CC)とは、別名でレギュラーチェーンとも呼ばれる、全店舗が本社直営のチェーンストアだ。
チェーンストア自らが資金投下し、従業員を雇用。運営企業と各店舗は同一資本下となるため、各店舗の売上はすべて運営企業の収益になる点が特徴だ。
ブランド構築や売上管理、マニュアル化なども、すべて本社がコントロールする。本部主導で経営するため、ブランドの価値を各店舗間で均一に保てる点がメリットといえる。
フランチャイズチェーン(FC)
フランチャイズチェーン(FC)とは、フランチャイズ契約を結んだ各店舗を加盟店とし、運営するチェーンストアを指す。
フランチャイズ契約とは、本部が加盟店に対して商標や商号の利用、商品やサービス販売の権利などを提供し、対価として加盟店から契約金やロイヤリティを受け取る契約だ。
日本では、数多くの業種でこのフランチャイズチェーンが取り入れられており、90%以上のコンビニエンスストアがこの形態に該当する。各店舗は資本的には独立しているが、経営方針や商品プロモーションなどは、本社の指示に従わなければならない。
ボランタリーチェーン(VC)
ボランタリーチェーン(VC)とは、独立した複数の店舗が1つの組織になり、一緒に運営しているチェーンストアだ。
一般的に個人経営の店舗では、大量の仕入れによる仕入れ価格の低減ができない。しかしボランタリーチェーン下に入れば、仕入れや販促活動、経営ノウハウなどを独立した店舗同士で共同化することで、利益を拡大できる。
本部と各店舗の関係はフラットなため、各店舗の特性を活かした対等な運営も可能な点がメリットとなる。また、各店舗は自発的に1つの組織として集まるため、加盟店同士のつながりはフランチャイズチェーン(FC)よりも強い。
チェーンストア運営で得られるメリット
チェーンストア運営では、具体的に以下の4つのメリットが得られるだろう。
- 大幅なコスト削減ができる
- 質の高いサービスを安定的に提供できる
- 事業運営の効率化
- 情報を一元管理できる
大幅なコスト削減ができる
1つ目は、仕入れ数が増えるため、より安価な仕入れが可能となる点だ。チェーンストア運営では、各店舗の仕入れを本部がまとめて行なう。仕入れ価格を抑えられれば、販売価格も下げられるため、顧客へのアピールや価格競争力が向上する。
また、人材教育や売上管理、目標設定なども本部が集約・管理するため、運営コストの削減に寄与するだろう。
例えば、ある店舗で不要になった設備を、違う店舗で再活用できる。その他、設備の共用や人員の配置交換なども可能となる。
質の高いサービスを安定的に提供できる
2つ目は、どの店舗も本部からの指示に沿って、統一的な運営を行なっているため、サービスが均一化する点だ。
店舗ごとにサービスの質にバラつきがあると、売上や品質への影響が懸念される。しかし、チェーンストア方式なら店舗の責任者をはじめ、社員やアルバイトなども効果的に教育でき、接客品質の向上が可能だ。
どの店舗でも同じ質のサービスが受けられれば、顧客は安心して利用できるだけでなく、信頼感の向上や企業のファン固定化につながる。
事業運営の効率化
3つ目は、本部は事業運営に集中でき、効率的で統制された運営が可能な点だ。
本社と店舗がうまく連携できていれば、マニュアルの変更や全体周知などもリアルタイムで行なえる。たとえ本社と店舗が離れた場所にあっても、双方の認識をすり合わせたうえで運営できるため、効率的に売上やブランド力を高められるだろう。
また、一般的に多店舗展開する場合は、店舗ごとに売上や顧客データなどを集計する必要がある。しかし、チェーンストアならPOSデータを使用した施策も展開しやすい。
情報を一元管理できる
4つ目は、前述したPOSや専用システムを使用すれば、各店舗の情報を本部で素早く一元管理できる点だ。
店舗によってバラバラだった情報が1つにまとまることで、運営状況の分析が容易となり、課題や問題点も明確になる。得られたデータをもとに、顧客動向の把握や広告展開の決定なども可能になるため、より良いビジネス戦略の立案に活かせるだろう。
「年代別の商品売上の傾向」や、「全店舗で共通するクレーム傾向」などを洗い出しながら、売上やサービスの質向上に活用しよう。
チェーンストア運営のデメリット
一方で、チェーンストア運営にはデメリットも当然存在する。具体的には以下の3つの点が挙げられるだろう。
- 採用コストがかかる
- 設備投資が高額になりやすい
- 経営リスクが高まる
採用コストがかかる
1つ目は、採用コストがかかる点だ。
チェーンストアでは人材育成コストを抑えられるが、店舗数が多いほど従業員が必要になるため、採用コストが高くなる。マニュアルや本部の指示に不適合な人材を採用した場合、別の人材を再度雇用しなければならない。
採用コストを削り過ぎると、優秀な人材の獲得が難しくなる。また、人材採用を間違えた場合、マニュアルの記述にはない教育の必要性が生じ、人材コストがかさむ点に注意が必要だ。
設備投資が高額になりやすい
2つ目は、チェーンストアでは新しく店舗を出店する場合、必然的に設備投資が必要になる点だ。
1つの店舗の経営がうまくいったとしても、他の店舗の経営も順調にいくとは限らない。採算が取れない店舗が増え、思うように全体で利益が出なければ、設備投資の回収もできなくなるだろう。
利益を出すために新規出店を早めたとしても、悪循環に陥りかねない。
経営リスクが高まる
3つ目は、経営リスクが高まる点だ。
特にフランチャイズチェーンでは本部統制が難しく、経営リスクになりやすい傾向がある。例えば、2つの店舗のテリトリーが重なることにより、店舗同士での顧客の取り合いが起こるケースが考えられる。
チェーンストアでは、商圏を狭くして地域占拠率を高める戦略を取ることが多い。しかし、店舗ごとの商圏が重複すれば、企業全体の売上に影響する可能性がある。
まとめ
チェーンストアとは、チェーンストア理論に基づいた経営手法だ。この理論では基本的に、本部主導で複数の店舗の経営を管理・運営する手法である。不特定多数の顧客に対して、できる限り効率的かつ効果的に運営手段を提示し、多くの商品を売ることを重視している点が特徴だ。
チェーンストアには、大幅なコスト削減やサービスの質の安定、事業運営の効率化、情報の一元管理などができるメリットがある。一方で、採用コストがかかる点や設備投資の高額化、経営リスクなどのデメリットには十分に理解と注意が必要だ。