米アマゾンの物流拠点で75万台が稼働! 人型ロボットは労災を食い止められるか?
米アマゾン(Amazon.com)がかつてない規模で倉庫の自動化を推し進めている。同社はこのほど、自社物流業務ネットワーク全体において75万台以上のロボットを開発、製造、展開してきたと明らかにした。AIを活用した高度システムを導入し、フルフィルメントセンターやソートセンターなどの効率化を進めている。
10年以上にわたる「アマゾン・ロボティクス」の研究開発の成果
「われわれのロボットは、年間数十億個の荷物を処理し、生産性を飛躍的に向上させている」と話すのは、米アマゾンロボット事業CTO(最高技術責任者)のタイ・ブレイディ氏だ。同氏によれば、米アマゾンのロボットは、単に作業を自動化するだけでなく、従業員の身体的負担を軽減し、より高度な業務に集中できるようにする役割も担っているという。
アマゾンは、2012年に米キバ・システムズ(Kiva Systems)を7億7500万ドル(当時の為替レートで換算すると約650億円)で買収し、それ以降、ロボット導入を本格化させてきた。15年にはこの部門の名称を「アマゾン・ロボティクス」に変更。その後、10年にわたり研究開発を重ねてきた。その結果、75万台を超える、搬送ロボットやロボットアームなどが世界各地のアマゾンの倉庫で稼働するようになった。
自律走行搬送ロボや仕分けロボ、人型ロボも登場

アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)が開発した人型ロボット「ディジット(Digit)」
現在、米アマゾンで稼働中のロボットは多岐にわたる。なかでも最初に導入したのは、買収したキバ・システムズの「Kivaロボット」で、棚ユニットを下から持ち上げて移動させるというものだった。その後、このシステムは、1トン超の重量物を持ち上げられる「Titan(タイタン)」や、500kgまでの荷物を持ち上げて、約9万3000m²(東京ドーム約2個分に相当)の敷地内を走行する「ハーキュリーズ(Hercules)」へと進化した。
その後、同社は完全自律走行型搬送ロボット「プロテウス(Proteus)」も開発した。AIによる画像認識技術を用いることで倉庫内で従業員の動きを遮ることなく、縦横無尽に移動できる。そのほか、吸盤とセンサーを組み合わせ、繊細な荷物を傷つけることなく持ち上げ、仕分けする「カーディナル(Cardinal)」や「ロビン(Robin)」も開発している。
22年には、商品パッケージのかたちや色などを瞬時に認識し、アーム先端で吸い上げて、異なる複数の箱に仕分ける「スパロー(Sparrow)」を導入。梱包箱ではなく、商品パッケージそのものを直接認識して仕分けるロボットの実用化はアマゾンとして初めての取り組みだ。
加えて23年には、米アマゾンが出資する米新興企業、アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)が開発した人型ロボット「ディジット(Digit)」の運用テストを始めた。ディジットは、物流施設内を二足歩行で移動し、腕で物品を持ち上げ、別の場所に移すことができ、現時点では空のコンテナを回収する作業を行っている。米アマゾンは現在、労働災害などにつながりかねない従業員の反復作業の軽減にこのディジットを活用できるかどうかを調査している。
さらに同社は25年5月、触覚センサーを搭載し、より繊細な商品のピッキングと格納が可能な新型ロボット「バルカン(Vulcan)」を発表した。このロボットは、人間が届きにくい高所の棚での作業を代替し、作業者の負担軽減に貢献することが期待されている。
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