無人営業も行う、福岡の顔認証入退店の八百屋 これまで万引きゼロの理由
店舗出入口に顔認証システムを採用した青果店が福岡県にある。年中無休で9時から23時まで営業する「八百屋ノ直売所 原町本店」だ。導入したのはSBTCA(スバキャ/東京都/松本恒彦社長)が開発・提供する顔認証ソリューション。無人となっている時間帯が長いが、これまでに窃盗被害はゼロ。対面接客する店舗を営みながら、新しいタイプの店舗運営に乗り出した経営者の松尾友晴氏に、その効果を聞いた。
課題は窃盗リスクと青果販売に発生する3つの業務

青果店「八百晴」を経営し、朝倉青果市場で仕入れる野菜や果物を取り扱う松尾氏。2024年2月にスバチャの顔認証ソリューション「FACE-SYSTEM」で電気錠の開閉をコントロールする「F-DOOR」を導入した「八百屋ノ直売所 原町本店」を開店した。対面接客の店舗と、無人になる時間帯も多い店舗を同時に運営する。
青果販売店には、仕入れの量が多いほど価格を抑えた販売ができるメリットがある。顔認証システムを導入した店舗を出店した背景には、人手が足りなくても店舗を増やし、低価格を実現したいという思惑があった。
郊外の街道沿いなどで見かける無人販売所の場合は、取り扱う野菜や果物は基本1種類、多くても2~3種類だろう。会計は設置された箱に現金を入れる方式で、一律価格で販売しているケースがほとんどだ。しかし、品ぞろえを重視する「八百屋」のスタイルでは、その方式は採用できない。盗難防止とともに考えなければならなかったのが、こだわって仕入れた種類も販売価格もさまざまな野菜や果物を、どうやって複数店舗に並べ、手頃な価格で提供するか。そこで考案したのが、この八百屋ノ直売所の運営モデルだった。
商品梱包と陳列にはかならず人手がかかるが、あらかじめ準備することができる。商品説明や調理・食べ方のアドバイスなどを行う接客の要員は欲しいものの、人材採用や固定費の問題で、常に配置することは難しい。会計はセキュリティがしっかりしていれば無人でも差し支えなく、セルフレジを設置すれば価格が異なる商品の取り扱いにも対応できる。
「接客要員がいるにこしたことはなく課題は残るものの、無人になっても店を開けておく状態を優先するために、機械にできる部分は任せてしまおうと考えてセルフレジを導入した」(松尾氏)

基本的に松尾氏は八百晴にいて、隣駅にある八百屋ノ直売所は雇用するスタッフが運営。ただし、営業時間の9時から23時までの間、常駐させることはできない。ここで「F-DOOR」導入のメリットが発生する。
「スタッフさんには商品搬入や梱包、会計用のバーコードシール貼付などバックヤードでの作業に力を注いでもらい、家庭の用事などで外出する場合も店は開けたままにしておける。本来ならシャッターを閉めなければならないところを、無人で営業を続けられるのは大きなメリット。もし、これから配達などのニーズが発生したとしても問題なく対応できる」(同)