第99回 「顧客を把握できる」ECに対し、リアル小売が取るべき3つの戦略とは

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)
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一部の百貨店などの商業施設では、インバウンド景気に沸いていることについて憂慮していることを前号で指摘した。今回は、ECとリアルの差がますます乖離していることについて解説する。リアルな場は、この乖離を乗り越えるのか、はたまた甘受するのか、早晩選択することを迫られる。

ECは物販だけではない

 ショッピングセンター(SC)従事者にECと店舗の差について問いかけると、「リアルは触れる」「目で見れる」「コミュニケーションがある」といった優位性を回答する。

 しかし、ECは物販だけではない。旅行の予約、音楽や映画の視聴、飲食店舗やサービス店舗の予約、支払いや決済、タクシーの配車、海外へ行けばUberGrabなどのライドシェア、新幹線や飛行機の予約、英会話や資格試験の学習など数え上げればキリがない。我々の生活は、スマホを使ったオンラインサービスで完結している。

 人と人とのコミュニケーションですら、直接会って話すよりSNSでのやり取りに費やす時間の方が長い。海外ではTikTokLIVE機能が買い物チャネルとして普及している。物販もECサイトだけでなくなるほど、境目はなくなっているのが現状だ。

店舗にお客が入ってきて把握できること

 ショッピングセンター(SC)内の店舗に入ってきたお客を見て、店員はどこまでわかるだろうか。

 「この人は過去に来たことがあるのか?(来店履歴)」「買ったことがあるか?(購買履歴)」「どこに住んでいるのか?、年齢は?、職業は?、年収は?(顧客属性)」「保有カードは?、コード決済は?(決済情報)」などこれらは全てわからない状態である。顔見知りになるくらいの常連であれば、ある程度まではわかるがアルバイトに至るまで店員の全員がわかるはずもない。

 ところが、ECサイトはログインした途端に「年齢、性別、住所、氏名」「いつ、何を、どれくらい買ったのか」「支払いのカードブランド」など登録データと購買履歴が瞬時に把握されレコメンドがされる。顧客も過去に買ったものを自らの購買履歴を追うことで把握することが可能である。

 このログインという行動を顧客が取るだけで全てが把握され、それも24時間対応が可能であることはECの最も強い側面であり、リアル店舗では

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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