衝動買い
買物の楽しみのひとつは衝動買いだ。
売場でたまたま目にした“一期一会”と思しき商品を、「ここで会ったが百年目ぞ。逃さぬ」とばかりに購入する。その時の、えも言われぬワクワク感と言ったら、なかなか表現できるものではない。
過去には、清水の舞台から飛び降りるような決断をすることもあったし、懐の小銭で間に合う場合もあった。購入後には、満足したことも、落胆したこともある。
でも、「その時にしか買えない」という付加価値も含めて、衝動買いには買物の醍醐味があった。
ところが、これだけネット通販が普及してくると、衝動買いには、なかなか踏み切れなくなっている自分に気づく。
「スマートフォンで、あるいはパソコンで、欲しい商品の相場を確認した後に、価格を比較してから買いたい」と消費行動が明らかに変化してしまっているのだ。流行りの言葉で言えば、“ショ―ルーミング”(=売場で現物を見てネットで購入する)ということになる。
それというのも、仕入れて売ることを生業とするセレクトショップに置かれた商品は、ほとんどがネット上での検索が可能であり、“一期一会”の希少価値がないことが分かってきたからだ。
ネットの海を探しまわれば、大抵の商品とは何とか再会できるわけだから、衝動的には購入せず、最低価格を見てから買えばいい。ある程度の金額の商品であれば、無料で自宅まで届けてくれる――。
約135兆円(商業統計)からなる物販のうち、衝動買いがどの程度を占めるのかは知る由もない。しかし、ネット通販の普及によって、リアル店舗における衝動買いは、今後大幅に減少していくものと予想できる。
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