小売業に影響する2019年以降の税制改革(3)
政府が打ち出した消費税引き上げに伴う対策

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 政府は、11月、2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴う経済対策として、軽減税率を含めた9項目の骨格をまとめている。9項目は、次の通りだ。

 

プレミアム付き商品券の発行 低所得や0~2歳の子育て世帯向け
2万円で2万5000円券
利用店舗は発行自治体で大型店も可
キャッシュレス決済時のポイント還元
個人番号カードへのプレミアムポイント 中小店ポイント還元実施後の一定期間
商店街の活性化
飲食料品などへの軽減税率制度
増税時の柔軟な値上げを促す指針策定
自動車、住宅購入者への税・予算措置 省エネ・耐震性の高い住宅にポイント、住宅ローン減税拡充、車保有の税軽減
防災・減災、国土強靭対策 インフラ点検受け2018~20年度に実施
幼児教育の無償化、年金生活者支援

 

 検討されている対策の中では特に、「キャッシュレス決済時のポイント還元」が注目されている。これは、中小小売店でクレジットカードなどで決済した消費者へ、2~5%分のポイントを還元するというものだ。

 

 キャッシュレス決済については、安倍晋三首相がかねてから普及を推進していることから、ポイント還元についても安倍首相肝いりの政策となっている。しかし、その実態はまだはっきりしていない。安倍首相は18年11月、ポイントの還元率を5%とし、実施期間を19年10月からの9か月間とする意向を示していた。増税幅(2%)を上回る還元率で、景気への影響を最低限に抑える狙いがあった。

不公平感が残るポイント還元、効果は不透明

レジ決済

 問題は、対象となる中小小売店に、コンビニが含まれていることだった。なぜなら、コンビニの店舗の多くはフランチャイズによる加盟店であり、それぞれは独立した事業形態を取っているからだ。しかし、コンビニ本部が直接運営する直営店は、大企業に該当され、この対象ではない。そのため、還元率を一律5%にすると、会社側が還元分を自己負担することになり、負担が増すという事情があった。

 

 また、増税分を超える還元を行うと、消費の流れがコンビニに流れることも予想された。コンビニを十把一絡げに中小小売店とするのは無理があるという声も出た。

 

 そこで、政府は、大手以外の中小小売店は還元率を5%として、コンビニなどの大手チェーン店の還元率を2%とする方向で検討していることが明らかになった。

 

 5%と2%の2種類の還元率が併存することになり、消費者の混乱を招く可能性もある。さらに、カードの保有率の低い高齢者や低所得者は、このポイント還元の恩恵を受けることができない。消費税増税対策が弱者救済であるという意味においては、課題が残されている。

 

 小売業に関連する消費税対策には、他にもプレミアム付き商品券の発行、個人番号カードへのプレミアムポイントなどが挙げられているが、詳細はこれから検討していくとしている。

 

 「今回の引上げ幅は2%だが、前回の3%引上げの経験をいかし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」と、閣議で安倍首相は発言している。

 

 2019年度予算案に上乗せする経費は2兆円程度と見込まれている。増税に伴う家計の実質負担増加額をほぼ埋め合わせる規模だ。財政再建のための消費税増税の対策のために財政再建が棚上げの様相を見せる。対策の効果が不透明の中、増税まであと9ヵ月しか残されていない。

 

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