部下を潰す店長と育てる店長 違いはここにある!
会社の成長ステージに合わせて成長できる人材とそうでない人材
2人の店長の違いは、どこにあるのか。私は、次のような教訓を導いた。
こうすればよかった①
育成の仕組みを整える
この会社が今も存続し、売上1億円を超えているのは、池下の力によるものが大きい。創業時には、強力な営業力を持つ社員が必要なのだ。確かに、部下の育成はできない一面があったのかもしれないが、会社への貢献度は相当に高かった。私自身、実は2014年に彼の顧客のひとりだった。
池下は会社の成長のステージに、自らの成長を合わせることができなかった。業績を拡大させ、部下を雇うようなところまではできるのだが、育成の仕組みづくりができない。部下が3∼5人になったら、本来、仕組みづくりを覚えなければいけなかった。現在、新店長の野原はそれをある程度は心得ているのだろう。
こうすればよかった②
仕組みづくりをするうえでの心がまえ
仕組みづくりのポイントとして、まず心得えるべきは、「自分ひとりではできない」と正しく認識することだ。ひとりではできないからこそ、情報や意識、目標の共有態勢をつくる。組織で仕事をする風土や文化をつくるのだ。池下は相変わらず、「自分ひとりでなんとかなる」、と信じ込んでいた。そんな姿勢ならば、会議をして、チャットツールを使おうとも、大きな効果は発揮しない。
皆の力で仕事をするならば、野原のような「自由放任」式にする時も必要だ。報告などは毎日聞く態勢にしつつも、職場の空気を和やかなものにする。そのような「楽しみのある職場」の空間を形づくるのが、リーダーの仕事だ。池下にはそんな発想すらなかった。プレイヤーのままならば、「俺、ひとりでできる」でもいいかもしれない。マネージャーでもあったのだから、意識を変えるべきだった。あの営業力を知るだけに、惜しいとつくづく思う。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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