流通再編の衝動その3 セブン&アイ、“オムニその後”とスーパー戦略再構築のゆくえ
成果見えぬオムニチャネル戦略
そしてセブン&アイは、赤ちゃん本舗、ニッセン、タワーレコード、Francfranc、バーニーズジャパンと錚々たる顔ぶれの企業を傘下に入れていく。ある証券アナリストは、「(ネットを軸としたオムニチャネル化は)ブランド力のある専門店を持つことが有力な集客策になるという考えだったのではないか」と分析する。
しかし現状を見てみると、ニッセンホールディングスは営業赤字が続き、事業の再構築の真っ只中であり、赤ちゃん本舗やバーニーズジャパンなどについても、グループのネット戦略に貢献しているとは言い難い。その結果、19年2月期のグループのEC売上高は1131億円と前期よりも41億円増えてはいるものの、その成長率は3.8%増で、経済産業省が今年5月に発表した国内 BtoC-EC 市場の物販系分野の成長率8.1%を大きく下回る。もちろん、国内で1兆5000億円超(18年1~12月)の売上高があるアマゾンジャパン(東京都)の売上高には遠く及ばない。
こうした状況下、セブン&アイは現在、「セブン-イレブンアプリ」でネット事業の巻き返し策を図っている。だが、この施策は中核の「セブン-イレブン」を軸としており、「グループ企業が有機的に結びつき、ネット事業を拡大する構図にはなっていない」(某IT企業の社長)という声もある。
傘下のスーパー各社との相乗効果は?
さて、セブン&アイは地方の有力スーパーと相次いで提携してきたという一面も持つ。北海道のスーパーのダイイチ、中国地盤の天満屋ストア(岡山県)、大阪府地盤の万代、さらに18年には西日本小売の雄、イズミ(広島県)とも業務提携した。
これらの提携は、イトーヨーカ堂(東京都)が傘下スーパー各社と協業して物流を共同化したり、「セブンプレミアム」の販売ボリュームをアップさせたりするほか、将来的には仕入れなどでも協業化を進めるねらいだったとみられている。
しかし最近になって、イトーヨーカ堂が地方店の分社化を検討しているという報道もある。分社化を通じて提携先のスーパー各社といかに相乗効果を見出すのか。課題が残る。
主力のコンビニ事業が踊り場に差し掛かっている現在、セブン&アイは広げた戦線を実のあるものにするため、どのようなグループ像を形成していくのか。正念場を迎えている。(次回に続く)