第11回 社長の独りよがりな「社会貢献活動」で社員が大量退職
社会貢献を逃げ道に使ってはいけない
偉大な祖父や父に負けたくないー。そんな思いが災いしているのかもしれない。私は、次のような教訓を導きたい。
こうすればよかった①
「部下は何を求めているのか」をまず把握せよ
人間先立つものはお金であり、生活費だ。少なくとも会社員はそのために職場に来ている。経営者は、ここを起点に考えないといけない。中小企業ならばなおさらだ。経営状態が低迷し、賃金が増えない場合は何よりも賃上げこそ、急務だ。
ところが、三代目社長はそこを疎かにしている。それでいて、活動に猛進する。しかも、社員を強引に参加させる。さしたる説明もなく、だ。ここに、社員たちは胡散臭いものや不誠実さを感じ取る。
部下を育成する時に、まず、何を求めているのか、何が今、最も大切なのか、をきちんと考えたうえで接する必要がある。それができる人を「部下掌握力がある」と呼ぶのだ。
こうすればよかった②
まずは経営状態が芳しくない現実を受け入れるべき
会社や部署には、成長のステージがある。今回でいえば、祖父と父が経営していた頃と、現在は状況が大きく異なる。おのずとマネジメントの手法も変わらなければならない。だが3代目社長は、そのことを本当の意味では心得ていない。祖父や父を意識するのは仕方がないとしても、やはり、時代も置かれた環境も違うのだ。
3代目は、まずは経営状態が芳しくない現実を受け入れるべきだ。そこから、スタートをしないといけない。部下の育成をする時に、「こうありたい」と願うあまり、現実離れした目標などを求める場合がある。あるいは、通常あり得ないような仕事の進め方でさせるケースもある。上司が持つある種の妄想や思い込みが、部下を路頭に迷わせる可能性があるのだ。リーダーの心のあり方で、会社や部署はどうにでもなっていくことを、理解したい。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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