第7回 勘違いした「若き女性課長」のパワハラ指導
気負いすぎの新任管理職はまず自問自答しよう
懸命にがんばっている若き課長ではあるのだろうが、気負いすぎの一面もあるように見える。こういう新任管理職は読者諸氏の職場にいないだろうか。私は、次のような教訓を導いた。
こうすればよかった①
「なぜ、厳しいのか」と自問自答せよ
部下に厳しいことが即、問題になるわけではない。上司なのだから、時には叱責が必要だろう。しかし、許容範囲を超え、部下を潰してしまうならば深刻な状況である。今回は、それに近いのではないか。
なぜ、ここまで厳しくするのか。理由の1つには、前職でいじめを受け、退職せざるを得なくなった苦い経験があるのではないか。それが今も心に残り、不満や怒りを発散するがごとく、部下に当たるのではないか、と私は考える。つまりは、脅迫観念である。私が取材を通じて、厳しすぎると思える上司を観察すると、過去に「傷」をもった人が少なくない。例えば、生い立ちや学歴、新卒時や中途採用時の就職活動、入社後の扱い、人事評価や私生活などにおいて、何らかの挫折や大きな失敗があるように思えてならない。
課長は、自分自答をしたほうがいいのではないだろうか。向かい合うのは、自分のいたらなさや非力さではないかと私は思う。それができないから、部下をいじめるのかもしれないが、その弱さこそが問題の本質なのではないか。
こうすればよかった②
指導や助言の意味を正しく理解する
課長は、経験が浅いから今は難しいのかもしれないが、育成の意味を心得たほうがいい。部下の仕事力を時間内である程度のレベルに引き上げるのが「育成」だとすると、育成のためにどうすべきかを踏み込んで考えないといけない。叱り、怒るだけならば、一般職でもできる。管理職ならば「育成できる」力が当然あるはずなのだから、それを発揮しないといけない。ないならば、上司(部長や役員)に事情を話し、助言を得ながら育成をしたほうがいい。
その際、自分が育成される側に回るが、「どのような言葉をかけられると、やる気が沸いてくるのか」を考えたい。本来は、昇格前にこういう繰り返しで、育成力を身につけるべきだったのだ。
こうすればよかった③
後ろ盾は本当にあるのか
課長は、「役員たちから期待されている」「同世代のエースだ」などと信じ込んでいるのかもしれない。その一面はあるのだろう。しかし、あくまで現時点でのことであり、今後、社内の状況や人事異動などにより、変わる場合がある。
課長がパワハラに近い行為を繰り返し、部下を次々と潰すならば、やがては孤立し、どこかのタイミングで社外へ排除されるのかもしれない。ここまで考えたうえで、日々の育成に取り組んだほうがいい。
課長にあえて言いたい。あなた自身は育っていますか?部下を持つレベルに達していますか?人の上に立つ器でしょうか?
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
当連載の過去記事はこちら