第3回 社長も自覚なし!妻の悪口が原因で人がやめる会社の末路と教訓

神南文弥(じんなん ぶんや)
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従業員を店のコミュニティに入れれば解決できる

 小さな店では従業員の出入りは激しいもの、と言えばそれまでかもしれないが、この事例は会社員にとっても参考になるのではないだろうか。私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
職場での「言葉」には細心の注意を

 夫婦は、人を雇うことの自覚に欠しいという批判は免れえないだろう。小さな店であれ、本格的な大企業であれ、職場で口にした言葉はどこかのタイミングで本人の耳に入る可能性がある。特に管理職はそこまで念頭に置いて話すべきだろう。逆に言えば、部下を機会あるごとに「いい仕事をしている」「ひたむきだ」などと持ち上げておくと、本人がそれを知るときがやがてくる。おそらく、上司には好印象を持つのではないか。この積み重ねで、部下の心を掌握できうる。今回は、それとは真逆なのだ。

こうすればよかった②
コミュニティーに部下を入れる

 なぜ、妻はアルバイトのことを次々と語ってしまうのか。おそらく、お客さんたちの間には、独特のコミュニティーがあるはずなのだ。つまりは、店舗内で連日、井戸端会議を行い、その話題の1つにアルバイトの「仕事ぶり」がある。この会議を無くしてしまうと、お客さんは少なくなる。売り上げにも影響があるはずだ。

 会社でもこれに似た構図はないだろうか。独特のコミュニティーがあるがゆえに、その部署が成り立ち、業務がスムーズに進む。このようなときは、新参者のアルバイトはなじめない。だから、定着率は低い。次々と辞めていくから、特定の人、この事例では夫婦に仕事やそれに付随する情報が集中する。夫婦はある意味で「ハブ」のような存在となり、コミュニティーを一段と強化し、毎日の井戸端会議を盛り上げる。そこにアルバイトはもう、入れない。ここにも、気がつかないうちに部下を潰す構図がある。

 コミュニティーを破壊することは不可能であろうし、それは事業の「死」を意味する。ならば、発想を変えて、可能な限り、その輪の中にアルバイトを入れるように試みたい。全員は無理だろうが、1∼2人でも入るようになれば、夫婦も仕事の負担が減るのでないだろうか。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

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