防犯からマーケティングまで、小売業で広がるクラウドカメラの可能性
クラウドカメラ活用で総菜の売上が向上!?
現に、カメラで取得したデータをマーケティングに活用した成功例も登場している。関東で食品スーパーを展開するベルク(埼玉県/原島一誠社長)は、総菜売場に設置したクラウドカメラのデータを活用して弁当の配置を変えた。その結果、月次の売上が約10%増加したという。
具体的にどう活用したか。まずはカメラで撮影している画面に「線」を引き、その線を通過した人数や滞留時間を記録できる状態をつくる。その上で、弁当売場をABCD」の4つのエリアに区切り、各エリアの通過人数や滞留人数をカウントすると、ADCのゾーンを通過してBに滞留する人が多い傾向が見えてくる。
そこで、ADのゾーンに「カツ重弁当」のような定番商品、DCには売り切り品を置き、Bには高単価だがじっくり見ると価値が伝わる「季節の弁当」やキャンペーン商品を配置した。データをもとに配置を変えたりポップを立てたりと工夫をこらした結果、利益率の高い商品がよく売れるようになり、売上も伸長した。
「店舗前の通行量、来店数、棚前で立ち止まった人数などのデータが採れると、店舗内のどこで、どのような売り方をすれば売上が伸びるかPDCAを回せるようになる」と、山本氏。もっとも、生のデータを分析し、POSデータなどに紐づけて解釈するためには、データ分析の知見とノウハウが求められる。しかし、小売企業にデータを分析できる人材がいるとは限らない。セーフィーでは、カスタマーサクセスの担当者がクライアントの相談にのり、データ分析をサポートしている。将来的に、分析したデータをもとに具体的な施策を提案できないか検討中だ。
人流データのみならず、商品を対象とした画像データも収集できれば、クラウドカメラのマーケティングへの貢献度はより高まるだろう。山本氏は、「AIを使った物の検知・分析は、対象物や周辺環境が変わるごとに新たに学習させる必要があり、人のカウントと比べて複雑だ。学習すべきデータ量は膨大で、実装には時間がかかる」としながらも、「すでに実店舗での実験を行っており、非常に可能性を感じている。実現に向けて日々奮闘している」と語った。