リテールメディアの始め方

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リテールメディアの始め方
小川 哲氏

株式会社セールスフォース・ジャパン 
インダストリートランスフォーメーション事業本部 
小売消費財業界シニアマネージャー リテール・ストラテジスト
小川 哲 氏

 

メーカーにとって、リテールメディアは効果的な広告媒体

 リテールメディアは、メーカー側から見た場合、効果的な広告媒体と言える。配信先の顧客数が多く、メーカーにとってデジタル接点でのセグメント広告はECやメール、アプリといったリテールメディアを使った配信では、購買までの効果測定も実施できる。広告配信精度も小売業の持つファーストパーティーデータに基づいて、離反顧客、競合ユーザー、類似商品ユーザーまで、精緻にターゲット設定することが可能である。

メーカー側から見た場合、リテールメディア(特にデジタル接点)は効果的な広告媒体と言える

 ボストンコンサルティングによれば小売業のオウンドメディア(EC、サイネージ、アプリ)など自社メディアで配信した場合の粗利率が70~90%、一方Web広告などペイドメディア活用では20~40%。既存事業の粗利率がだいたい20~30%なので、既存のビジネスと比較するとリテールメディアは非常に高い粗利率となる。米国ウォルマートのリテールメディア事業ではメーカーから広告費を取って、4500以上の店舗にある壁面のディスプレー、セルフレジの画面にも広告表示するほか、ECやアプリで連動型のブランド広告やプロダクト広告を出している。広告事業として21億ドルの売上だが、昨対比136%と約2.4倍の成長。特筆すべきは利益であり、全体の売上比では約0.5%程度だが利益ベースでは12%占めている。

 リテールメディアと親和性が高い業態は、まずメーカーなど取引先を多く持っている企業。リテールメディアというとスーパーやコンビニのイメージが強いがディスカウントストアやドラッグストア、家電量販店、百貨店はメーカーとのつながりが強いので適している。
 2つ目のポイントは、EC会員やアプリ会員、メール会員などデジタルで1to1アプローチできる会員を多数持っていること。広告の配信先が多ければメディア価値が高まる。3つ目は、顧客情報をきちんとID管理して持っていること。基本属性、購買情報、ECやアプリの閲覧や開封履歴などファーストパーティデータをきちんと持っているところが条件になる。

Salesforceがリテールメディアの運用を一貫サポート

Salesforceを活用した実現イメージ 広告営業~広告配信~効果検証までを一気通貫で実現

 リテールメディアの業務イメージは大きく広告営業、広告配信、効果検証と3つのステップに分かれる。営業は小売業がID-POSやCDPのデータを分析して、消費財メーカーに対してどのセグメントに広告打っていくと効果的と提案する。このときファーストパーティデータを持っていることが強みになる。

 クリエイティブが入稿されECサイト、サイネージ、アプリプッシュなど配信接点をセグメントに分けて広告を出す。最後の効果検証はメーカーに対して閲覧、開封や広告を出したエリア、期間の売上、セグメント配信した場合は配信したユーザーが本当に買ってくれたのか、そしてリピーターになってくれたのか。こういったところまで効果検証レポートにする。

 リテールメディア運用上の課題は、代理店への丸投げでは利益率が低く、活動が停滞してしまう。自社でやるにはプロセスが煩雑で工数がかかる。広告業務に適したデータモデルがなく事業立ち上げが遅くなる。配信セグメントの抽出から配信実行までの手作業が多いことなどがあげられる。

 この課題の解決のためにSalesforceがサポートできる。代理店に委託するにしてもSFAで営業活動を一元管理できる。利益率についてもAmazonのようにセルフで広告を受注し案件管理できる仕組みを提供できる。データモデルについても広告業界向けに特化したデータモデルを持っているので事業を早期に立ち上げできる。広告営業からセグメント抽出、メールでの配信、広告効果の検証まで共通のプラットフォームで、一気通貫で実行できるのも強みである。

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