第1回 コロナ禍であぶりだされた「DXの本質」とは
おいしい話ばかりではない
シェアリングビジネスは、個々人の労働時間が余っていたり、あまりに仕組みが非効率ならばマッチングが成立するが、構造が同じままでのリソース不足ではどうしようもない。仮に輸配送の場合ならば、人手不足の運び手優位で依頼者は価格を釣り上げられることになる(高くなりすぎると最終的な費用負担者が頼まなくなるので成長は止まる)。
巨大なGDPを誇るある国でも結婚適齢期は女性よりも男性が3000万人多いといい、男性は相当な条件を持たないとパートナーが見つからないという。この市場でマッチングビジネスを拡大するには次々とパートナーを変えさせるか、政府に多夫制を仕掛けさせるか、不倫天国を促すか、デジタルの利便性よりもモラルの転換が必要だろうが、女性優位なのは変わらない。
真面目な話に戻すと、身近な例では宅配便業者がどれだけ頑張ってもマンションにおいてはセキュリティやエレベータの能力、受取人の気まぐれに左右され、生産性は上がらないまま、出口のない人手不足が続く。
仕組みはそのままで成長するには、移民政策の転換を仕掛けるのか、運ばずに成立するビジネスに転換するのか、他力本願でいるのか、それともビジネスモデルの転換をするのか。今まさに分岐点で10年、20年先に偉業を成し遂げたと言われるポイントだと認識している。
創業者以上の大仕事
技術をどう使うかという観点も重要だが、本業全体を丸っと俯瞰してみる眼と両方を持ち合わせないとトランスフォーメーションの入り口には立てないであろう。
中期経営計画を策定する企業は多々あるが、旧態依然としたシステムや風土に配慮しながらオペレーションする企業は現在の規模が大きくても、今の規模と仕組みそのものが足枷になるであろう。捨てられないということは成長分野に投資もできないということでもある。
社内も社会も年功序列で「仕組みを遵守する」文化では改善案や落とし所案はでても、革命は起きにくい。革命文化がない日本では必然とも言えるが、移気で冷徹に購入先を選択する消費者と向き合う以上、立ち止まってはいられない。高度に仕組み化された大企業の革命を率いるリーダーはある種、創業者以上の大仕事を担っているといっても過言ではない。
「これまでの常識」からの転換である以上、過程においては大馬鹿者の謗りを受けるかもしれないが、覚悟なくしてトランスフォーメーションはなしえない。