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サステナブルリテールめざすオイシックス、カニやロブスターなどの培養肉を開発する米企業に投資

オイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長)は9月1日、子会社の投資ファンドFuture Food Fundを通じて、ロブスターやカニなど甲殻類の肉の培養技術を開発するフードテック企業Cultured Decadence (米国ウィスコンシン州)に投資を行ったと発表した。

持続可能型小売業を目指すオイシックスが代替肉ビジネスに参入

 オイシックスは「食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する」を理念として、さまざまな企業活動に取り組んでいる。中心となる食品定期配送の「Oisix」では、ふぞろい品の積極活用、家庭での食品廃棄を削減できるミールキットなどで「サステナブルリテール」(持続可能型小売業)を目指している。食品宅配の他にも、買物難民向け移動スーパー「とくし丸」の運営、米国でヴィーガンミールキットを展開するパープルキャロット(Purple Carrot)の100%子会社化など、活動は多岐にわたる。

 今回のカニ・ロブスターの培養肉を開発するベンチャー企業への投資も、海洋資源の保護に貢献するサスティナブルリテールとしての活動の一環である。代替肉の先進国である米国のフードテック業界の動向のいち早い把握も投資目的の一つで、今回の出資を通じ、将来的には日本での商品化も視野に入れている。

 投資を実行したFuture Food Fundは2019年にオイシックスが設立した投資会社で、フードイノベーション(食の革新)を志す国内外のスタートアップ企業への投資を目的としている。オイシックスは今後も、国内外の先進的な食・農・ヘルスケアなど、フードテック領域のスタートアップ企業への投資を通じて、企業グループとしてのエコシステムの構築を目指すという。

代替肉の開発で米国が世界をリードする背景

 日本でも「大豆ミートハンバーグ」などの代替肉が商品化されるなどの動きが活発化しているが、代替肉の開発や製品化で世界をリードしているのは米国だ。米国のビヨンドミート(Beyond Meat)、インポッシブルフーズ(Impossible Foods)は代替肉市場開拓の牽引役として、すでに世界各国に進出している。

 米国で代替肉の開発が盛んな背景には、世界最大の牛肉消費国として、畜産が地球環境に与えるとされる悪影響を無視できないことがある。とくに、2006年に国連の食糧・農業機関が発表した報告書「Livestock’s Long Shadow」で、「温室効果ガス排出量の18%近くが牛や豚などの飼育によって発生する」と記されたことがマスコミや消費者の大きな関心を呼び、代替肉開発のきっかけの一つになった。

 代替肉には大きく分けて、「培養肉」「植物性代替肉」「昆虫食」の3種類がある。中でも培養肉は、高度なバイオテクノロジーを駆使して動物の筋肉細胞を培養・整形するものだ。肉の持つ独特の繊維感を出すために「三次元培養法」などの技術が用いられているが、まだ開発途上の段階で本格的な商品化は将来的な課題だ。海洋生産物の培養肉も海洋資源保護、持続可能な漁業のために試みられている、今回、カニやロブスターといういわゆる「高級食材」の培養が投資の対象になったのは、商品化した際にある程度の販売価格が見込め、商品化に繋げやすいためと見られる。