第1回 アメリカのベーカリーカフェチェーン「パネラブレッド」の生き残りをかけた泥臭いDX戦略

顧客時間 共同CEO:奥谷 孝司
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生鮮食品販売のスタート
「上司おごりサービス」も

 このような環境下に陥った飲食店業界の経営者であれば、IT投資の凍結や、出店の停止といった守りの経営に入ることを考えるのではないだろうか。しかしパネラブレッドは、矢継ぎ早にデジタルを活用した戦略をコロナ禍においても推進する。まずは、なんと生鮮食品の販売に乗り出したのだ。

 通常メニューのサンドイッチやスープはもちろんであるが、サンドイッチに使用する食材をネット注文のメニューに追加し、購入可能とした。商品の受け渡しは通常メニューと同様、店内かドライブスルー、もしくは宅配が選択できる。この辺りのスムースなデジタル化はやはり、事前のデジタル投資が効果を発揮しているといえるだろう。

 パネラブレッド以外にも、サンドイッチ専門店の「SUBWAY」も同様の取り組みを行なっているというが、SUBWAYがどの程度デジタルシフトの準備が整っているのかは定かではない。

 また、Adobe Summitに登壇した、CDOのGeroge Hanson氏によると、店内コンタクトレス・ショッピングの推進として車中受け取り(カーブサイドピックアップ)や、駐車場でのWiFiサービス、アップルカードの導入、ジオフェンシングを活用したオンライン注文からお客様の到着を考慮した調理システム、さらにはテレワークで実現が難しい同僚とのランチをオンライン上でも実現するサービスも展開したのだ。

 この仕組みは、ホスト(たとえば上司)が、同僚や部下が無料でパネラブレッドの商品を注文できるURLを送れるサービスで、支払いはホストが行うことができる。筆者はこれを勝手に「上司のおごりサービス」と呼んでいるが、画期的かつ、挑戦的なサービスといえるだろう。

 コロナ禍においてもDX推進のスピードを緩めることのないパネラブレッドは、今後の展開としてデジタルドライブスルーの導入から、パーソナライズ化の進化を進めていくという。

パネラブレッドのサービス画像
同僚や部下が無料でパネラブレッドの商品を注文できるURLを送れるサービスで、支払いはホストが行うことができる

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