EC比率3割!ナノ・ユニバースのTSIが進めるオムニチャネル戦略とは?
ネット予約した試着で、8割が商品購入
ところで、同社は、ECチャネルを拡大する半面、リアル店舗の販路を縮小している。コロナ禍でオフライン営業が難しくなっているのもあって、2021年2月期には、全国のグループ店舗数が1000店舗を下回ってしまったという。越智氏は、「今後もリアル店舗のウエートは低下するでしょう」と見る。
とはいえ、リアル店舗がECに置き換わってしまうわけではない。EC単独よりも、リアル店舗との二刀流のほうが、販売効率がはるかに高いからだ。
例えば、同社のECサイトにアクセスした顧客のうち、商品購入する割合はわずか1%。不特定多数の顧客にリーチできる半面、販売効率は高くない。それに対して、リアル店舗の場合、多額の運営コストがかかるものの、来店客数に占める購入客数の割合は、平均6~7%にも達する。
越智氏は、「ナノ・ユニバースの場合、ECとリアル店舗を併用するお客さまの年間購入金額は、ECのみご利用のお客さまの約4倍にもなります。グループ内では、7倍に上るブランドもあります」と明かす。リアル店舗の強みや価値については、こう説明する。
「お客さまの中では、ECとリアル店舗を併用するのが圧倒的な多数派。とりわけ、収入が少ない若年層は、商品購入に慎重で、ネットで詳しく調べてからリアル店舗で商品を確かめて、お買い上げになるケースが少なくありません。女性のお客さまも、実際のコーディネートを試したいというニーズが根強いんですね。ITがどんなに発達しても、リアルの試着に代替するのは難しいでしょう。それに、リアル店舗の最大の売りはサービスです。スタッフによるライブの接客、コミュニケーションは、ECでは味わえません」。
そこで、同社が打ち出しているのが「ユニファイドコマース戦略」だ。ネット派、リアル店舗派、ネット+リアル店舗派の顧客が混在し、カスタマージャーニーが複雑化する中で、「オンラインでも、オフラインでも同じブランド体験ができるような、サービスを提供する取り組みです」(同)。
その一環として、2021年3月から、ウェブの試着予約サービスをスタートした。予め試したいアイテム(複数も可)と店舗、日時を指定する。アテンドするスタッフ(パーソナルスタイリスト)を指名することもできるという。「自分のファッションの好みを把握している、なじみのスタッフの接客を要望されるお客さまが多いので、好評です」(同)。
試着予約サービスを申し込み、実際に受けた顧客は55%、そのうち、試着後に購入した顧客は80%に達したという。
越智さんは、「デジタルが浸透すれば、お客さまは、リアル店舗のスタッフと時には店頭で、時にはSNSで、ご自分の都合に合わせて、自由にコミュニケーションを楽しめるようになるでしょう」と、ユニファイドコマースの進化形を語ってくれた。