楽天とRoktが分析するNRF 2025 APAC 顧客体験とリテールメディアの新局面
2025年6月、シンガポールで開催されたNRF 2025: Retail’s Big Show APAC(以下、NRF 2025 APAC)は、アジアにおける小売業界最大級の展示会として、アジア諸国を中心としたリテールイノベーションの最前線を披露した。楽天グループ マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャー・秦俊輔氏、Rokt ビジネス開発ディレクター・大野皓平氏が現地でセッションや展示を視察、ニューヨークで行われるNRF本大会とは異なる文脈で語られた「ハイブリッド消費」「Z世代への訴求」「AIで進化するリテールメディア」についての重要なインサイトを得た。(本稿はオンライン有料読者限定の「NRF 2025 APACレポート」です)。

「ストア・オブ・トゥモロー」が示す
ハイブリッド時代の店舗の新たな役割
NRF APAC 2025では、開催国シンガポールの大手スーパーマーケットチェーンであるフェアプライス(FairPrice Group)による展示がとりわけ注目を集めた。ブースでは「ストア・オブ・トゥモロー」をテーマに、来店から決済、購買後の体験に至るまで、テクノロジーを駆使した新しい購買導線が提示された。
「フォーマット・イノベーション」と題するセッションに登壇したフェアプライスのチーフデジタル&テクノロジーオフィサーであるデニス・シー氏は、同社が進めるデジタル変革について語った。買い物中にスマートカートでスキャンしながら決済が完了する体験や、顔認証による支払い、アプリと連携するサイネージによる広告パーソナライズなど、店頭とオンラインを融合する試みについて語った。
話をフェアプライスの展示ブースを戻すと、在庫を持たずにサンプル展示のみで販売する「体験+EC誘導」型の仕組みにも注目が集まった。家電コーナーでは、実機のデモンストレーションを見た顧客が、表示されたQRコードを通じてフェアプライスのアプリやメーカーの公式ECサイトへと誘導され、購入を完結させるというものだ。
この仕組みについて、楽天の秦氏は次のように語る。
「“体験を起点としたEC導線”のモデルは、楽天市場にとっても非常に参考になります。たとえば、楽天ポイント加盟店と連携することで、店舗での体験からオンライン購入へと自然につなげる新たなハイブリッド導線の構築が可能になると考えています」
こうした、物理的な(フィジカル)世界とデジタル(デジタル)世界を融合させた“フィジタル”な店舗モデルでは、顧客主導の購買体験が重要なテーマとなる。デジタルサイネージは商品の比較情報やレビュー、動画コンテンツを提示し、来店者は店員を介さずとも自らのペースで購入判断を行える。また、閲覧データや購買データを活用することで、より精緻なマーケティングやレコメンドが可能となる。
店舗の役割が「商品を売る場」から「体験とECへの送客の場」へと変化する中、こうした構造は新たな収益源に





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