スペース効率を高め、省人化を実現する倉庫システム
ネット通販の拡大やコンビニエンスストアの台頭により、多品種少量物流が当たり前になっており、大都市圏を取り囲む高速道路沿いに大型物流倉庫の設置が続いている。その一方で、倉庫はできても増設や能力増のニーズは高まっている。しかも物流業界においても人手不足は慢性化し、倉庫要員の確保もままならない。そのためスペース効率を高め、省人化を実現する倉庫システムに注目が集まる。オカムラが販売するノルウェー生まれの「オートストア」は、まさにそのニーズに合致したロボットストレージシステムだ。
保管量やスペースに合わせて自由に設計
「オートストア」はもともとノルウェーの電子部品商社ハッテランド・グループが、自社で扱う多品種のエレクトロニクス製品の物流効率向上をねらって開発したロボットストレージシステム。現在はオートストアAS社が製造販売を担い、日本ではオカムラが代理店となっている。すでに欧米をはじめ世界各地で約300件のシステムが稼働している。
「オートストア」の特長は、倉庫に平置き棚を並べるのではなく、大きさの決まったコンテナを立体的に隙間なく積み重ねるという方法を編み出したこと。ルービックキューブのように各ピースが積み重なっているイメージだ。その上を複数台のロボットが縦横無尽に走行し、コンテナを引き上げて作業者まで運ぶという、ユニークで画期的なしくみとなっている。 システムは格子状に組まれたアルミ製の支柱と梁で構成するグリッド、ビンと呼ばれる専用コンテナ、グリッド頂部の梁の部分をXY方向に走行する無線制御のロボット、作業者がビンから商品の入出庫作業を行うポート、それらの制御を行うコントローラーからなる。
グリッド内にビンが多段積層されるが、グリッド自体がシンプルなモジュール構成のため、設計の自由度が高い。必要とする保管量やスペースに合わせて設置できる。 倉庫内に柱があればそこを避けてグリッドを配置することも可能で、しかも通路を確保する必要がないため限られたスペースを有効活用できる。
倉庫作業は1日の歩行距離が10㎞超になるケースもあり、しかも高い棚からの商品の出し入れ、低い棚なら屈んでの作業など肉体的負担が大きい。しかし「オートストア」は、ロボットが目的とするビンを引き上げて、ポートまで自動搬送するので、作業者は歩き回ることなく、楽な姿勢で入出庫作業を行うことができる。
収納効率は平置き棚の2~3倍
自動走行するロボットは、無線制御に加えて自律的にも稼働する。ビンをつかみ損ねればリトライし、不調の際には自己修復まで試みる。複数のロボットがグリッド上を走行しているので1台が故障してもほかのロボットで稼働を継続することができる。
もちろん充電ステーションまで行って充電するのも自動制御だ。 建築基準法により日本では、耐火構造の倉庫は防火区画を1500㎡ごととすることが定められている。「オートストア」をこの区画に最大限納める場合、中央部にトンネル状のポートを設置することで約3万5000ビンの収容能力を発揮する。ビンを床から隙間なく積み上げて収納する構造のため、通路スペースを削減でき、人の手が届かない上部空間まで高密度に収納できる。これにより、一般的な平置き棚と比較して約2~3倍の収納力を実現する。
「オートストア」は構成要素が単純なためアイテム数や在庫量、時間当たりの入出庫量などパラメーターを入力すれば容易に設計・シミュレーションが可能だ。「ヒトがモノを取りに行く」のではなく「モノがヒトのほうに運ばれてくる」という点で、省人化や働き方改革にもつながる「Goods toPerson」(GTP)を実現するロボットストレージシステムというわけだ。