商品の仕入れ、開発にもDXの波!? 注目の新サービス「デリズマート」に見るバイヤーの未来

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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 2022年11月22日、食品小売業界のマーチャンダイジング業務のDXプラットフォームサービス「デリズマート(Delizmart)」のベータ版がリリースされた。運営企業のデリズマート(東京都/上村 友一社長)は2021年2月創業のスタートアップ企業で、同サービスはすでに大手投資ファンドから資金調達を受けるほど、その成長性が見込まれている。具体的にどのようなサービスで、業界にいかなる変革を起こそうとしているのか、取材した。

デリズマート概要
2022年11月、スタートアップ企業のデリズマートが注目のサービス「デリズマート」のベータ版を立ち上げた

商品のマッチングから
条件交渉、注文管理も

 「デリズマート」が掲げるのは、「話題の食品ブランド」と「小売バイヤー」をスマートにつなぐ卸売プラットフォームだ。事業スキームはのとおり。「デリズマート」が食品ブランドと小売バイヤーの仲介者となり、食品ブランドが出品する商品と、買い手となる小売バイヤーとをマッチングするプラットフォームを提供するとともに、商品取引で生じる各種作業をデジタル化する。

デリズマートの事業スキーム
図:デリズマートの事業スキーム

 周知のとおり、食品スーパーのバイヤーは多忙だ。こうしたなか「デリズマート」は、バイヤー側には、商品の買い付けやサンプル品の注文、見積もりの取得、条件交渉、商品の注文履歴・管理などの業務のサポートを提供する

 一方の食品ブランド側には、新規販路の開拓や商品取引の際の条件交渉・受注、販促、配送などの業務の効率化を支援する。これによって最終的に双方の収益率の向上や、競争力アップのための活動に集中できる環境の実現をめざすという。

 サービスの利用料金については、小売バイヤー、食品ブランド側いずれも、登録や利用費用は無料だ(一部機能に制限あり)。食品ブランド側から提示する商品価格にデリズマートの利用料がすでに含まれる形で、小売バイヤー側は、商品代以外に特段、費用を請求されない。商品価格は双方の条件を鑑みて、まずは「デリズマート」が自動化によって「ベストプライス」を提示し、そこから議論を開始することでスムーズな商談を促す。

 両者ともに1つの口座で全ての取引を完結可能で、小売バイヤーは取引先ごとに新しく与信管理をしたりする必要がなくなるという。

バイヤー側へのソリューション
「デリズマート」はバイヤー側の調達業務をスマート化する

値上げラッシュで急激に
バイヤー業務がひっ迫

 デリズマートが今、同サービスを立ち上げた背景には、小売バイヤーの業務がひっ迫している現状がある。ロシアのウクライナ侵攻を受けて原料価格が高騰し、メーカー各社が次々値上げを発表。ピークとなった2022年10月には約6700品目の商品が一斉値上げし、こうした動きは2023年も続く見込みだ。小売バイヤーはこれらの価格変更の対応に追われている。

 デリズマートの上村友一社長は「食品メーカーの中には商品取引をFAX等の手作業で行っている企業もいまだ多い。そうしたなか、食品スーパーの商品部では、昨今の値上げラッシュで、価格変更に関連する作業は当社調査で約10倍に増えている。これらをアナログな手法で対応していくには限界があり、デジタル化が必須」と述べる。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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