欧米の最新動向に学ぶ、「理想の買物体験」を追求するためのDXの在り方とは?
少子化やDXが進む中、小売業界での再編が加速している。業界再編により、取り扱いする商品が増えたり、ネットとリアルの垣根を超えたりと、お客にとっての理想の買物体験を追求しようとする動きがみられるようになった。今回はアメリカでの出店戦略や店舗運営の事例を紹介しつつ、デジタル技術を介した、顧客にとって理想の買物体験を追求することの重要性を考えていきたい。
在庫管理の仕組み強化が顧客の継続利用につながった
小売業界の再編に伴って高効率なチェーンストア化が進み、お客は商品を低価格で購入できる一方、定番化する新商品や、新規性のある商品が少なくなってきている。その結果、小売企業ごとに品揃えの差がなくなり、若年層は欲しい物が揃うECサイトなどで商品を購入する動きが加速しているのはご存じのとおりだ。
本連載の第1回でお伝えしたように、消費者の購買行動とその嗜好性は多様化し、その地域や客層の需要に合わせた品揃えの変化が非常に重要になってくる。場合によっては店舗の大きさ、フォーマットや商圏の捉え方に対する考え方も大きく変える必要もあるかもしれない。
そんななか、アメリカのサンディエゴで「Valet Market」という店舗を運営するスタートアップ企業「Accel Robotics」が、ひとつの商圏に店舗兼倉庫となる母店を中心に小型のハブ店舗、さらにはその間を埋めるようにサテライト店舗を展開している。「Accel Robotics」は独自のシステムを構築し、在庫切れやお客の希望する商品をリアルタイムに処理し、倉庫となる母店から商品を移動させて適切なタイミングで商品を提供する仕組みを持っている。
これにより、店舗ごとに品揃えを柔軟に変更することが可能になるため、お客様満足度が高く、継続利用に繋がっており利用者のおよそ半数は1週間に一度以上は店舗を使う状態になっている。
レジレス化で浮いた人手を配送に
一方でデリバリーサービスや新規出店で商圏を広げるだけでなく、足元の顧客を確実に取り込むための工夫をしている小売店もある。
先述したアメリカの「Accel Robotics」はサンディエゴのタワーマンションの1階にハブ店舗となるコンビニを構えている。入居しているタワーマンションの住人の9割が店舗の利用登録をしていて、うち8割は1週間に一度利用、さらに2割は毎日使っているというデータがある。このマンションの周りにもスーパーやコンビニはあるが、「Accel Robotics」が運営する店舗はとにかく利便性が高い。
特徴的なのは、ルームサービスのようなデリバリーサービスだ。マンションの住人はアプリで欲しい商品を選んでオンライン決済すれば、お酒など一部商品を除き5分もかからず商品が部屋に届く。日本のコンビニのデリバリーサービスは「Uber Eats」や「出前館」という外部のサービスを利用しているため時間がかかったり、外部サービスへの手数料が発生したりするが、「Accel Robotics」は店舗自体を無人店舗システムによりレジレス化を実現しており店舗スタッフが商品を届けに行くため時間も外部会社への支払いが発生しない。
「想定外だったのは、日頃店舗にいる顔見知りのスタッフが部屋に商品を届けてくれるので部外者が届けにくるサービスよりも安心感があるというコメントが住人から出てきたこと」と同社のプロダクト責任者のAli Zamiriさんは嬉しそうに話していた。
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