アパレル余剰在庫問題の解決めざす!KDDI開発、布の質感までわかる電子マネキンとは
デジタル型紙を使った3DCG化で、環境負荷軽減を強力支援
一方で、「au VISION STUDIO」は、アパレル業界における商品の企画、デザイン時のサンプル制作を、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用することによるサンプルレスで資源の無駄がないサステナブルなモノづくりを支援する取り組みを2021年から行ってきた。
1着の洋服が作られ、販売されるまでは、商品企画・サンプル制作、量産、販売というプロセスをたどるが、サンプル制作のプロセスで数回サンプル品を作るのが一般的だ。そこで着目したのが、このサンプル品の廃棄ロスをなくすこと。それを解決するのが「デジタル型紙を使った衣服の3DCG」だ。
「洋服を作るうえで必須となる型紙づくりを制作段階からデジタルで行うことができれば、実物がない商品もXRマネキンによって3DCGで表現できるので、プロモーションに活用することが可能。これが理想形だと考えている」(藤倉氏)
サンプル自体が不要となり、その結果、予約販売 (受注生産) や需要予測などにも活用できる。さらに、髪の毛1本1本までフォトリアルに再現されたバーチャルヒューマン「coh」に着せて表現することで、消費者側も実物がなくてもリアルな着用イメージを確認することができる。つまり、購入のボタンを押すまで作り出さない、究極的にサステナブルなものづくりが可能になるのだ。
このデジタル型紙を使った取り組みはすでに一部で始まっているというが、「従来からの紙の型紙をすべてデータで作るやり方に変更しましょう、というのは正直難しいのが実情」(同)
そこで力を入れているのが、これから新たにファッションに関わろうとしている服飾の専門学校生にこの新たな技術を伝授していくこと。当面は、「ボリュメトリックビデオ」を使ったXRマネキンの認知、普及を目指し、「デジタル型紙を使った衣服の3DCG化」については5年後を目途に実用化を進めていきたい考えだ。
水田リーダーは、「今年度中に実店舗への導入を進めるため、パートナー企業と話を進めている」と話す。さらに、今後は、流通系企業や商社ともタッグを組むことも視野に、服飾学校の学生への教育を一層強化していく。
「アパレル業界のDX化と余剰在庫の削減」を目指し、業界全体のサステナブル課題を解決すべく邁進するKDDIの「au VISION STUDIO」。その果敢なチャレンジがアパレル業界の変革につながっていくことを期待したい。