あなたの会社はどのパターン? DXが遅々として進まない「5つの要因」

鈴木 康弘 ((株)デジタルシフトウェーブ代表取締役社長)
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要因マーケティング部門だけが突っ走る

 マーケティング部門がDXを推進するというケースも見られます。昨今はデジタルマーケティングがマーケティング活動の主軸ですので、部門全体がデジタルに精通していることからDX担当に向いていると思われがちです。

 しかしマーケティング部門は、全社的な事業やシステムへの理解が必ずしも深いわけではありません。すべての企業に言えることではありませんが、お抱えの広告代理店とともにコンセプトをつくり出すものの、広告以外の業務は他部門に丸投げするケースも少なくありません。デジタルマーケティングという大義名分のもと、高額なCRM(顧客管理システム)を導入し、現場を混乱させるケースも増えています。

要因開発作業・新規ツール導入だけが増えていく
  

 この4つめの要因は、システム部門がDXを推進する場合に見られがちなものです。システムに精通するだけにDX推進に向いているように思えますが、課題となるのは既存の業務スタイルです。システム部門は原則、現場要件をシステム化する受託型で、何をすべきかといった要件を求め、外部のシステム会社に相談するといった仕事が大半です。

 関連して「ツール導入≒DX」と考える傾向も、失敗要因の1つです。システム部門はベンダーからの最新ツールなどの提案を待つ傾向が見られます。これらの提案を受け入れれば、システム導入が加速して業務は効率化するかもしれません。しかし、多くのシステム導入は費用が膨らむのはもちろん、現場を混乱させかねません。業務が複雑化すれば、DXすらままならない状況に陥ってしまいます。

要因外部に任せきった結果、自然消滅
 

 これは、大々的にデジタル化へと舵を切る大企業によく見られます。DXは全社を巻き込み、トライ&エラーで前進させることが常道です。しかし大企業がDXに取り組む場合、コンサルティング会社やシステム会社に丸投げすることが珍しくありません。とはいえ、費用を無尽蔵に捻出できるわけもなく、取り組みが長続きせず自然消滅してしまうのです。

 さらに問題なのは、丸投げした結果、社内にノウハウが残らないことです。外部任せにしてしまったことで、社内の人材育成の機会を失い、多くの大企業でノウハウの空洞化が発生していることが深刻な問題です。

他人任せの意識がDXを停滞させる

 ここまで取り上げた5つの失速要因は、どれも多くの日本企業で実際に起きている問題です。リーダーのDXへの覚悟不足、エンジニアやマーケターへの過度な期待、外部依存による継続性のなさなど、これらはどれも、DXに対する「他人任せの意識」によるものです。こうした意識に気付かずにいると、DX推進プロジェクトが迷走してしまうのです。

 では、「他人任せの意識」を取り除くためにはどのようなアクションが必要なのでしょうか。

 その1つが、全社員によるデジタルスキルの底上げです。「DX推進プロジェクト」は、主導する部署や担当者が取り組めばよい、というものではありません。全社員を巻き込み、デジタル化という企業風土を新たに醸成することに目を向けなければなりません。

 そのためには全社員が自分事としてDXを捉え、変革のために自身のデジタルスキル強化が必要だと認識することが大切です。企業は全社員のデジタルスキル強化を支援し、全社一丸でDXに取り組む環境づくりをめざすべきでしょう。

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記事執筆者

鈴木 康弘 / (株)デジタルシフトウェーブ代表取締役社長

1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役就任。2006年セブン&アイHLDGSグループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS執行役員CIO就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会会長も兼任。

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