第7回 まずは「データ分析」より始めよ
デジタルトランスフォーメーション(DX)を始めるにあたって、グッデイの柳瀬隆志社長は「まずはデータ分析から始めるべきだ」という。なぜデータ分析なのか、また同社はどのようにデータ分析に取り組み始めたのだろうか。
データ分析を
どう始めたか
経営において重要なのは、正しい情報をタイムリーに入手し、すぐさま最適な打ち手を講じることだと考えます。それを実現するために「データ分析」には早いうちから取り組み始めました。
私がグッデイに入社して間もない頃、そもそも社内にどのようなデータが存在しているのか正しく認識していませんでした。定型帳票以外のデータを入手するにはシステム部への依頼が必要で、手元に届くまで3週間以上かかりました。システム部がどのような作業をしているのかも理解しておらず、今思えば非常に効率の悪いやり取りをしていました。
私もできる限りデータ分析に取り組みたかったのですが、担当者に負担を強いることになるため、言い出しにくいという状況でした。また、さまざまな視点から分析するためには複数のデータを組み合わせる必要があり、データが大きすぎて、自分のパソコンでエクセルを使って分析することは事実上不可能でした。
その状況は「BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール」を活用することで一変しました。
2015年、システム部のメンバーが「AWS Redshift(レッドシフト)にPOSデータをアップロードしたので使ってみてください」と言ってきました。AWSレッドシフトはクラウド上にデータを保管できるサービスです。これとBIツールを組み合わせることで、自社のデータを簡単に分析・可視化できる環境ができました。
最初の段階では無料のBIツールを使っていましたが、専門知識がなくてもプロ並みのデータの分析・可視化ができる「Tableau(タブロー)」というツールを使い始めました。
タブローの操作はいたって簡単でした。データウエアハウスにあるテーブルにそのままアクセスし、さまざまなデータを可視化してみました。その結果、「これで、自分がやりたい分析はほぼ全部できる」と手応えを感じました。そこで、システム部や経営企画部のメンバーを誘って本格的にタブローを活用し始めた。
これが当社のデータ分析の始まりです。
経営者が自ら
データを分析
私は「経営者自らがデータを分析すべき」だと思っています。部下にお願いするでも、データサイエンティストを雇うでもなく、私自身が率先してデータ分析を始めたのは、社内で起きていることを定量的に把握し、迅速かつ的確な意思決定を下すことが経営者がやるべき最も重要な仕事だと思うからです。
これまでに外部企業に委託して顧客分析に取り組んだこともありました。しかし、1回の分析で100万円ほどのコストがかかり、期待するほどの投資対効果は得られませんでした。データ分析で成果を上げるには、業務を深く理解する必要があるからです。従って、データ分析は内製化で行う方が、効果が大きいと考えます。
また、同じデータを見たときに、経営者と財務経理部、経営者と営業部とではフォーカスポイントが微妙に異なります。たとえば、財務経理部は簿記や会計の知識を通してデータを見ますが、どのように業務を改善すれば業績が上がるかまでは責任を負いません。在庫回転率を上げるべきだとか、粗利率を上げるべきだとか、数値上の提案はしても、どうすれば在庫回転率が上がるのか、どうすれば粗利率が上がるのかというのは営業部の領域です。財務会計的な知識を持って営業施策を考えられる人は少ない。私の役割は、データを読み解き、2つの領域を経営視点で結び付けることだと思います。
経営者は、どうすれば自社のB/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)が良くなるか日々考えています。この活動の中にデータ分析を習慣化して組み込むことで、その結果を具体的な業務に反映させることが重要です。
だからこそ、経営者は自らデータ分析を行う必要があるのです。
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