第8回 経営者としての役割

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グッデイ流 デジタル活用実践術

デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるためには経営者が果たす役割が大きい。では、経営者は何をすべきなのだろうか。また、どのようなスキルが求められるのだろうか。

急速に高まる
IT知識の重要性

 2016年から5年間、社長という立場で経営をしていますが、「経営者の役割とは何か」について、未だにその答えを模索中しています。1つ言えるのは「継続的に利益を上げ、会社を存続させ続けること」が求められると考えます。

 そのためには、企業会計の知識や、組織全体を俯瞰してみることが必要です。そして、経営者に求められるスキルとして急速に重要度を増しているのが、ITに関する知識と経験ではないでしょうか。

 従来の企業システムは、高価なサーバーやストレージ、ネットワーク機器を購入し、専門のエンジニアがそれぞれの業務に最適なシステムを開発するというものが一般的でした。しかしここ10年ほどで大きく状況は変わりました。クラウドの恩恵により、少ない投資で高度なITを使うことが可能になりました。

 「ITの民主化」といわれる今の状況は、30年前の中学1年生のときに初めてパソコンを触れたときには想像もできませんでした。しかし、いまだ30年前と同じような感覚でITを捉えている経営者は少なくないように思います。

 インターネット・スマホの普及、クラウドサービスの拡大などにより、誰もが簡単に規模の大小を気にせずにITを活用することができる世の中になりました。たとえば、データ分析にクラウドを使えば、これまで人の手でやってきた作業が大幅に自動化されます。数時間、数日、あるいは数週間要していた作業が、たったの数秒で完了するようになります。この事実を知らない、あるいは知っていて軽視する経営者は、「継続的に利益を上げ、会社を存続し続けること」という自らの重要な責務を放棄したのも同然のように思えます。

データに基づく
検討を徹底する

 中にはITへの苦手意識が強く、自分には難しい、できれば関わりたくないという経営者もいるでしょう。また、ITは、経営者の仕事ではなく、システム部が対処すべきことだと考えている経営者も多いと思います。しかし、本質的には、システムは自社の業務や戦略を具現化するツールであり、経営者自らが主体的に関わるべき事です。少し見方を変えれば、ITは経営者が日々頭を悩ませる自社の課題や問題を解決するための、一服の清涼剤にもなります。

 もともと小売の経営者には、こまめに財務諸表を見たり、休日でも店舗を巡ったりして、顧客の動きや、自社の店舗の売場などの実態をつかもうと努力し続けている人が多いです。データ分析もそれと同じです。

 私は、毎週3店舗の店長と1時間~1時間半ほど各店舗の取り組みについて、話を聞いています。コロナ禍の中、オンラインでの会話となっていますが、店長から報告される内容は、この5年間ですっかり変わりました。以前は、店長の話が、主観に基づく話なのか、データに基づく話なのか、よくわからなかったが、今では各店長が自店のデータを細かく分析した上で、報告をしてくれるようになりました。そして、その内容から、私も新たなデータ分析のタネを見つけ、新たな視点でのデータ分析を行えます。店舗からの情報は、「宝の山」なのです。

 私はデータを読み解くことで実態を知りたいと考えています。データを武器に、顧客や社会の動きを客観的に把握し、世の中の変化をいち早く察知し、変化に対応することで少しでも成功確度を上げたい。

 今のデータ分析ツールは進化しています。想像以上に簡単に素早くプロ並みのことができるようになります。私が入社した当時のグッデイも、まった全くITを使いこなしていない会社でした。しかし、この5年間の取り組みにより、今や売場の担当者まで、日々の数字の動きを捉えて売場を変え、その効果をデータで検証する仕事のやり方が身についてきました。

 どんな会社でも、ちょっとしたきっかけさえあれば火がつくはずです。

店長との打ち合わせの様子
店長との打ち合わせの内容がこの5年でデータに基づくものに変わっていった

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