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多治見店とは違う「ロピア桑名サンシティ店」の独自の売場づくりとは?

ロピア(神奈川県)は中部地区では6店目となる「ロピア桑名サンシティ店」(三重県桑名市:以下、桑名店)を2月26日にオープンした。同店には、その約1カ月前に開いた中部地区5号店の「ロピア多治見店」(岐阜県多治見市:以下、多治見店)とは異なる売場づくりが見られる。前編の生鮮売場に続いて、後編は日配・加工食品などの売場を見ていこう。
調査日=2024年3月10~13日 ※本文中の価格はすべて本体価格

開店前にはロピア入口の前にお客が約100人並び、長い列ができていた

地域商品を軸にパン売場を大変革!

 日配売場で大きな変化が見られたのはパン売場だ。前回取り上げた多治見店とは様変わりしている。食パンは21尺で「巽製粉」に製造を委託しているオリジナル商品「7/7(シューナナ)食パン」(167円)、「サンミール」の「バター食パン1本」(399円)、「巽製粉」の「バーナードプレミアム食パン1.5斤」(219円)を展開。3尺1本で「パスコ」の「超熟」各種も取り扱い、計4品目で構成している。

 壁面の48尺ではオリジナルの「7/7」シリーズのパン9品目を並べる。また、「ロピア柳津店」(岐阜県岐阜市)からほど近い岐阜市柳津町に位置する「コガネパン」の「イチゴジャムパン3個」(349円)など26品目を導入している。また岐阜県各務原市にある製粉業「サンミール」の「米粉ロールパン」(199円)など9品目、さらに長野県安曇野市にある「ティンカーベル」の「たまごパンプレーン」(499円)など5品目も扱っている。

 大手パンメーカーではなく、地域の特徴あるパンで構成し、100円以下の商品はない。客単価アップをねらいつつ、ロピア独自のスタイルを確立したといえるだろう。

 冷凍食品では売れ筋である弁当食材の扱いを多治見店の70品目に比べ約4割に絞り、29品目とした。同様にパスタは「日清製粉ウェルナ」の商品に絞り13品目のみ取り扱う。冷凍食品は、商品構成を店舗によって変化させていることがわかる。

 逆にキムチの売場では約50種類を揃え、地域一番の品揃えをめざしている。

多彩なアウトドアスパイスを品揃え

 加工食品売場は前方と後方合わせて13レーンで展開している。前方に嗜好(しこう)飲料、缶詰、即席麺、菓子、健康食品、飲料を、後方には米、調味料、酒類を配置する。なかでも、前方に単価が張るプロテインとサブリメント、青汁を新たに導入していることに注目した。

 アウトドアスパイスにも注目したい。12尺で「アーバンコア」の「ろく助塩」シリーズ、「クエストページ」の「バカまぶし」、「ミモナ」の「アウトドアスパイスほりにし」、「MAC」の「オリジナルスパイスAJIME」、「中村食肉」の「マキシマム」、「肉のコバヤシ」の「七代目こばやし」など売れ筋からこだわり商品まで幅広く扱っている。個々の商品に特徴があり単価も高いが、品揃えが充実しているので購入者も多い。長年継続して育ててきたジャンルなのだろうと推察する。

ロピアのミルつきスパイスシリーズは1個99円で販売している。ブラックペッパーの原産地は南アフリカ共和国だ

 逆に多くのチェーンが力を入れているカレーやパスタ、中華・エスニックなどは売場を縮小し、利益率が高く、単価の高い商品群を重視した品揃えにしていた。

 酒類は「大田酒造」の「半蔵」、「早川酒造」の「田光 神の穂」、「丸彦酒造」の「三重の寒梅」、「宮﨑本店」の「宮の雪」など地酒15品目を扱っている。壁面には飲料・ビール系飲料が並ぶ。

ハンターフーズの「ハンターポテトチップス」。ヒマラヤソルト味(右)と黒トリュフ風味(左)

 菓子のなかでも力を入れているのがスナック菓子だ。48尺で展開し、「カルビー」や「湖池屋」などの売れ筋商品の大容量サイズを重視した品揃えにしている。ドバイの食品メーカー「ハンターフーズ」から輸入している「ハンターポテトチップス」も目を引いた。ヒマラヤソルト味、黒トリュフ風味など4種類を扱う。回転率の高いスナック菓子は、ほかのチェーンでは見られない商品を揃えることで販売を強化していると見受けられる。

売場から見えるロピアの個性

 桑名店の売場配置は多治見店と異なるが、ほとんどの商品構成は多治見店を踏襲している。生鮮も基本商品が統一されており、商品構成が標準化されつつあるように見受けられた。また、日配の乳製品、和日配、チルド飲料、ヨーグルトの商品構成は標準化されている。

 一方で、冷凍食品・アイスクリームは店舗によって対応が異なる。加工食品は全体的に品揃えを標準化する一方で、店独自の品揃えもしている。たとえば、酒、飲料も店舗によって対応が異なる。こうした対応が売場のメリハリに繋がっているのだろう。

 以上で述べてきたような「個店ごとの違い」にロピアの個性が表れているのではないかと筆者は推察する。ロピアは売場担当者の思いを反映した、ほかの大手チェーンには見られない売場づくりをしている。こうした売場づくりができているのは、担当者が現場で売場づくりについて考える時間を十分にとっているからだろう。

 ロピアは桑名店の開店により、台湾を含め89店を出店したことになる。チェーン店として徐々に標準化へ向かっていることは否定できないが、一方で、課題を現場で解決して決断できるスタッフが育っているように映る。現場主義の徹底が職人気質のプロフェッショナルな人材を育てているように思えるのだ。

 また、同社の実績が即自己責任に繋がる仕組みも、社員の情熱に繋がっているのだろう。その情熱が仕事の励みになり、働きがいになっているのではないか。

客単価を高める地道な工夫が奏功

 ロピアでは個々の商品は安いが、たいていのお客は予算をオーバーしてしまう。店内のお客を観察してみると、その多くが買物かご2つ分程度の買物をしている。お客はつい商品をかごに入れてしまっているようだ。これは客単価アップを誘うような“爆買い対応”を強化しているためだろう。またアウトドアスパイスなど単価の高い商品を育て、売れる工夫をしていることも奏功しているようだ。

 品揃えはできても、販売まで繋げられるチェーンは少ない。単価をアップするには根気が必要なものであるが、その我慢がほかのチェーンはできない。データに頼り過ぎて、どのスーパーマーケット(SM)の売場も類似しているのが現状だ。それだけに、ロピアの売場が新鮮に映って人が集まるのかもしれない。逆にいえば、ほかのSMの売場には魅力がないということだ。

(店舗概要)
所在地 三重県桑名市星川785 星川ショッピングタウン サンシティ1階
開店日 2024年2月26日
売場面積 総面積2182㎡(約660坪)、売場面積550坪(歩測)
営業時間 10:00~20:00
駐車台数 700台
競合店 MEGAドン・キホーテUNY 星川店(三重県桑名市)