「無印良品」を運営する良品計画(東京都/堂前宣夫社長)は2022年4月22日、同社世界最大規模の「無印良品 広島アルパーク」(広島県広島市:以下、広島アルパーク店)をオープンした。日常の暮らしに必要な商品群・サービスをすべて展開する「生活全部店」としては2店舗目の出店となる。
広島最大級の商業施設に出店
広島アルパーク店がオープンしたのは、30年以上の歴史を有する広島県内最大級の大型商業施設「アルパーク」の西棟。広島県のターミナル駅であるJR「広島」駅から山陽本線の電車に揺られ4駅目、「新井口」駅から徒歩約3分でたどり着く。JRのほか広島電鉄の駅やバスの発着場もあるため、地域の交通の要所となっている場所だ。
もともとアルパークの東棟には売場面積約230坪の無印良品があったが、西棟のリニューアルに際し移転オープン。旧店の8倍以上の規模に相当する約1870坪を誇る世界最大の無印良品として生まれ変わった。地場の食品スーパー(SM)フレスタ(広島県/谷本満社長)の新たな旗艦店「フレスタアルパーク店」と並んで、西棟の核テナントとなっている。4階建ての西棟のうち、1階と2階の大半を占める。
広島アルパーク店は、20年12月にオープンした「無印良品 東京有明」(東京都江東区)に続き、日常の暮らしに必要となる基本的な商品群・サービスをすべて展開する「生活全部店」として2店舗目の出店となる。
広島県産品を豊富に展開
良品計画は全社的な方針として以前から「地域への土着化」を掲げている。広島アルパーク店でもその方針は変わらず、地域に密着し、地域の役に立ち、地域を活性化するための売場づくりを実施している。
1階の食品売場では、冷凍食品約80アイテムを含め、無印良品の食品をフルラインで展開。また、レモンやはっさくなど地元産の青果を幅広く品揃えするほか、地元メーカーが製造した地域産品を約180アイテム展開する。たとえば、広島県福山市の保命酒(ほうめいしゅ)の蔵元が製造した「鞆の浦サイダー」や、大正時代のレトロなレシピを再現した「大長レモネード」、広島名物の牡蠣を使った「ひろしま牡蠣チャウダー」など、飲料やチルド商品、菓子、調味料などを種類豊富に品揃えする。こうした地域産品を積極的に仕入れることで、地域経済の活性化に貢献したい考えだ。
青果売場そばの「キッチンカウンター」では、こうした地元産の青果や地域産品と無印良品の食品を組み合わせた健康的なレシピを提案する。
ヘアケア商品の量り売りを初導入
無印良品では地域密着と並行して、長年環境配慮の取り組みやサステナブルにつながるサービスも追求している。広島アルパーク店では、既存店で導入済みの洗剤の量り売りに加え、シャンプーやコンディショナーなど10種類のヘアケア商品の量り売りを無印良品として初導入した。お客は持参したボトルに商品を詰めてもらうことができる。100gから必要な分だけ購入可能だ。
また、2階の「MUJI BOOKS」では「古紙になるはずだった本」を販売するほか、CD・DVDの回収ポストも設置。資源の再利用がねらいで、回収物は幼稚園などの施設に寄付されることになっている。
予約不要で健康相談ができるサービスも
地域の住民が気軽に集まることができる「コミュニティセンター」をめざす無印良品。その一環として広島アルパーク店には、「無印良品 直江津」(新潟県直江津市:以下、直江津店)に続き2店舗目の「まちの保健室」を導入した。
まちの保健室は、地域住民が気軽に健康相談できるのが特徴だ。看護師や管理栄養士などが日替わりで常駐し、予約なしで健康相談ができる。また、血圧計などを設置し、買物の合間に手軽に健康測定が可能だ。また、健康に関連する商品を販売するほか、直江津店と同じく「クオール薬局」が運営する調剤薬局も併設する。
●
無印良品の新店の内覧会に行くと、「地域に巻き込まれる」という言葉をよく聞く。その言葉からは、無印良品が地域の主役となるのではなく、あくまで地域活性化のきっかけをつくる場所としての役割を意識していることがわかる。広島アルパーク店をはじめ、一部の店舗が実施している「つながる市」(地域の生産者が出店したりワークショップなどを開催したりする企画)はそのことを体現した代表的な施策だろう。単に地域産品を取り扱うだけでなく、地域住民が自然と集まりやすくなるサービスやイベントを展開する無印良品の取り組みは、小売業の「地域密着」において参考になる部分が多いのではないだろうか。