ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015開催レポート
オムニチャネル・リテイリングの革新
究極の顧客体験・顧客ファン化を実現する戦略的アプローチ
<事例講演>
株式会社すかいらーく マーケティング本部 インサイト戦略グループ
ディレクター 神谷 勇樹 氏
現場が主導するデジタル化戦略の成功の軌跡
〜すかいらーくはどのように業績を改善してきたか〜
データ分析で顧客に最適なタイミングで最適なオファーを届ける
競争が激しい外食産業。業態のバリエーションを増やすことやメニュー提案、クーポン配信など、顧客誘導のために各社が様々な戦略を展開している。大手のすかいらーくは、これまで広告宣伝を売上拡大の有効な手段として導入してきた。しかし、その一方で広告の費用対効果に課題があることも明らかになっていた。そこで同社では新たにアプリの配信とPOSから得られる情報をベースにしたデータ分析を進めることにした。そこから新たな取り組みとしてデータ分析の自動化を図り、顧客に対して最適なタイミングで最適なオファーを届ける仕組みの構築に取り組んでいる。
従来は売上拡大を広告宣伝費の増大で支えていた
株式会社すかいらーく
マーケティング本部
インサイト戦略グループディレクター
神谷 勇樹 氏
従来から競争の激しい外食産業の中で、すかいらーくは広告宣伝を、売上増を達成する重要な手段と位置付けてきていた。例えば2012年度3297億円の売上に対して2013年度は3325億円に28億円プラスになったが、この間に広告宣伝費は44億7300万円から61億3300万円へと17億円増大している。費用対効果からみれば広告費増大の収益性は低かったわけだ。
そこでデータ分析を強化することで費用対効果の向上に取り組んだ。その結果、2013年度上半期の売上高1618億円に対して2014年度上半期は1657億円に39億円のプラスになった一方で、広告宣伝費は25億5200万円から22億3700万円へと3億円の圧縮を図ることができた。
そこでどのように分析力の強化を図ったかということになる。従来、すかいらーくではPOSデータを基にVolume(量)を軸にブランド別のキャンペーンの成果を集計・分析していた。しかし顧客を対象にした統計解析などの領域まで行っていないため、キャンペーンの内容が顧客特性と相関していないためブランドによっては著しく効果が低いという問題があった。
POSデータから得られる情報を分析し深堀り
そこでサンクスで展開していたサンクスクジを、従来のデザートやサイドメニュー中心から付加価値の高いグリル商品を割り引くクーポンに転換した。その結果、キャンペーンの利益を4倍に高めることができた。
このケースでは、Volumeゾーンの集計ではPOSデータから商品の販売構成比を立地区分別に集計したことに加え、統計解析を取り入れてVariety(種類)の領域で顧客アンケートとPOSデータを紐付けテスト商品の評価を行った。さらに機会学習を使ってPOSデータから顧客別のメニュー方針をクラスタ分析により策定することも行った。
例えば平日1人で来店しランチを注文し30分程度滞在された男性客ならば、「ランチのサラリーマン」だと推測できる。また平日昼に3人で来店しランチとドリンクバーを注文し2時間滞在した女性客ならばランチとおしゃべりを楽しみに来た主婦グループということがわかる。つまりどのような顧客がどのような時に来店するか把握すれば、嗜好もある程度わかる。POSデータからわかるのは単純に販売数だけではない。
中華レストランのバーミヤンでは、こうした分析を行いメニューの方向性を変えたことで販売数が2倍に近くに上昇した。経験やカンに頼っていた頃に比べて、明確に分析の効果が出ている。