ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015開催レポート
オムニチャネル・リテイリングの革新
究極の顧客体験・顧客ファン化を実現する戦略的アプローチ
<事例講演>
株式会社良品計画 WEB事業部長 奥谷 孝司 氏
無印良品『お客様と時間を共有する』 CRM & Digital Marketing戦略
『MUJI DIGITAL Marketingの展望』
顧客との関係を深め「顧客時間」を把握しマーケティング効果を向上
ユニークなマーケティング手法で注目される無印良品。ネットストアを展開する中で、顧客の行動を把握したことで新たなデジタル戦略に方向転換している。「顧客時間」を共有することで、より効果的なマーケティング施策の実行につながった。そしてスタートしたのが「MUJI PASSPORT」だ。従来のCRMアプリケーションを統合するとともに、さらに顧客との関係性を深め、顧客の行動を把握するのが狙い。そうした土台ができたことで、次のステップとして分析の自動化、高速化によるマーケティング施策効果の向上を狙う。
会員の6割はネットで買い物をしないという事実
株式会社良品計画
WEB事業部長
奥谷 孝司 氏
無印良品がネットストアを開設したのが2000年。当初の売上規模は微々たるものだったが、拡大を続け2006年には有楽町店を抜き最大店舗となり、2011年以降はさらに3年連続で2ケタ成長を続けている。しかし売上規模だけを見れば、ネットストアは全体の7%を占めているに過ぎない。
WEB事業の役割は、無印良品のネットサイトでの購買拡大は当たり前として、そのほかに重要なミッションとして店舗送客機能とくらしの良品研究所やソーシャルネットをベースにした顧客とのコミュニケーション拡大がある。しかし会員動向を調べると、過去2年間で最低1回はネットストアを利用した人は4割弱。そのうち半年以内に購買している会員は2割以下。6割以上はネットを見たりはするけれど、買い物をしないという実態がわかった。つまりオンラインストアが売上を上げても会社にも、顧客にも貢献度合いは少ない。顧客の時間にソーシャルメディア、CRMツールを使って積極的に関与することで顧客と無印良品の関係強化を図り満足度を向上させる方向に転換を図った。もはやオンラインストアの売上拡大には固執しないと決めた。
顧客連携を深め店舗送客や顧客満足度向上にシフト
「顧客時間」とは、購入前の検討から購入、さらに購入後の使用・消費までを指す。従来は購買時点だけに注目していたが、それだけでは答えは出ない。「顧客時間」全体を攻めることで売上だけでなく顧客との絆を作ることに注力を始めている。しかしネットストアの利用は約4割にとどまる。それならば店舗送客を強化するために、ネットや店舗、個人の時間の中でブランド体験を訴求・共有することが顧客満足度を高めることになると判断した。そこでWEB事業部の役割も店舗送客と顧客とのコミュニケーションを通じた顧客との関係改善にシフトし、結果として売上拡大につながる方向に転換した。
従来のネットストア注力がMUJI(DIGITAL)MARKETING1.0とするならば、方向転換は2.0への進化と言えるだろう。