ダイヤモンド流通戦略セミナー2014報告
ドラッグストア 顧客データ分析・活用戦略
パーソナルケアの価値創造
により市場の変化に対応
人口減少や高齢化、市場飽和、ネットによる市場浸食が現在のキーワード。この環境下でDgSの対応は、コモディティディスカウントとパーソナルケアの価値創造という2つの方向性がある。ディスカウントモデルは需要低下・所得減少に対して安さで対応すること。そのために運営コストを削減する必要がある。
パーソナルケアの価値創造および伝達は、生活者自身が気づいていないことも含めて、商品の情報を伝えて生活者の嗜好や悩みの解決につなげていくということ。古典的なMD理論では届きにくい分野であり、個々の生活者それぞれに商品の使用価値を認識してもらう必要がある。
そのために何をするか。対策として考えられるのが幅の拡張と市場の深掘。幅の拡張、つまり新たなカテゴリを入れることがまず考えられる。しかし新たなカテゴリを入れればそのために新たな管理技術を導入しなければならないし、カテゴリが増えれば店舗面積も拡張しなければならず、そのため郊外に出店することで、むしろ高齢化社会=コンパクトコミュニティに対応できなくなるジレンマがある。
まず考えるべきは市場の深掘である。限られた世帯数の中で潜在需要を発掘し、個々の生活者に対して未認知需要を伝達することである。当社ではID-POSを使用しており、もちろんPOSでも同様だが、そのデータは見ているようで案外見られていない。フェーズ1として顧客を知ること。それも生活者の属性で定義するのではなく、身近な存在であるDgSでの購買行動から何を知ればいいのかを定義することが重要。ビッグデータの活用といわれるが、ビッグであるよりディープであることが大切だ。
フェーズ2として、価値を定義すること。店頭で商品の価値を伝えるのが小売の仕事。個々の生活者は、それぞれ価値の属性が異なるため、買い手の状況に依存した価値を定義しなければならない。
フェーズ3は、その価値をどうやって伝達するか。アレルギー配慮ベビーフードを展開した際に、一方はメーカーが作成した「安心でおいしいベビーフードをどうぞ」というPOPで効果はゼロ、一方では「アレルギー配慮なのにおいしいね」という母親の心理を考えて「おいしさ訴求」に工夫したPOPを掲示することで売上が伸びた。
フェーズ4はリピート率を高めること。毎月100人の新規顧客が商品1個を買うと仮定し、リピート率が10%とすると1年後の販売数は111個。70%ならば330個となる。データを分析することで、どのような手を打てば、成果があがるか答えが見えてくる。
ネットとリアルの相互通行
がオムニチャネル化の真髄
当社を含め地域のDgS17社が参加するSegment of One&Onlyという研究会を組織し、その運営企業をつくった。各社のID-POSなどの年間データ約800万件の会員データを搭載するDBをつくり、会員企業でデータの相互開示を行っている。ディープでビッグなデータの活用を狙った活動であり、小売とメーカーのマーケティングプラットフォームとしても利用できる。
オムニチャネルも無視できない要素。SNSやtwitterなど個別的・選択的情報伝達機能を持つネットの強さ、生活者を知っているというリアルの強さを生かしたシームレスな融合が、今後は不可欠になってくる。ネットが入口となりリアルが出口となるケースやリアルが入口でネットが出口となるケースの両方向に対応できる仕組みがさらに強さを発揮する。データを活用し生活者に伝えるべき価値を定義し、そして行動を起こさせることが重要であり、そのための手段としてのオムニチャネル化が重要だと考えている。