ダイヤモンド流通戦略セミナー2014報告
ドラッグストア 顧客データ分析・活用戦略
調剤レセプトデータ活用し
アドヒアランス向上を実現
日本でも薬物療法を受ける患者の増加、外来療法の浸透、医薬分業の推進を背景としてDgSの役割も重要になっている。アドヒアランス(患者の医療参加)を推進するためにも、薬剤師のスキルアップが求められている。そこで重要性を増してくるのが医療機関とDgSの連携だ。
A企業のA店(調剤併設)におけるA患者の事例を紹介する。メデット錠の処方が、1月より確認できる。A患者を時系列で追跡した結果、6月以降、処方の実態が観察されない。そこで、他剤処方で来店した際に薬剤師が「声掛け」した結果、個人判断で服薬を中止していることが判明した。このように、患者軸や薬剤軸で、あらかじめアラートを設定することにより、患者・DgS間における相互関係の熟成、すなわち服薬を妨げる因子があるとすればそれは何か、それを解決するためには何が必要か、というアドヒアランス向上に寄与することが期待できる。
適応症マスタで20傷病を推測
関連商品など物販にも誘導
周知のとおり、DgSが保有する「調剤レセプト」は調剤の情報であり、傷病や診療行為などの情報は網羅していない。そこでPharmastaの適応症マスタが必要になってくる。
Pharmastaの適応症マスタは、JMDCが保有する200万人/月に及ぶ統計データ(医科レセプト・調剤レセプト)をソースに構築しており、医療現場に、より近い情報が反映されている。そして、適応症数については、1製剤につき、最大20傷病を紐付けている。また、常時データ処理を行っているため、鮮度という点においても優位性がある。適応症マスタを活用することで傷病を推測し、チェーンごと、店舗ごとに来店する患者の傷病属性が可視化できることで、棚を工夫したりすることで、物販売場への回遊を促すといった効果もあがっている。
風邪や流感、花粉症などはシーズン性があると認識されているが、たとえば頭痛や月経痛などはシーズン性の存在が最初から除外されている。しかし、レセプトデータからみると、頭痛は2月、7月、10月などが多く、月経痛も4月以降に徐々に増えていくということまでわかってくる。傷病のシーズン性を把握できれば、先手を打って棚割もターゲット顧客にわかりやすいように設定することができる。DgSの棚はわかりにくい、といわれるだけにデータを棚割に活用することで顧客にわかりやすく製品を提案できるようになる。OTCメーカーにとっても合剤における処方設計の端緒として有効活用できるだろう。
今回は、DgSでどのようにレセプトデータを活用できるか、その事例について取り上げた。オムニチャネル化という流れの中で、JMDCでは顧客との接点をオムニチャネルという立体的な空間として捉え、接点機会の拡大につなげる必要があると考えており、プライマリーケアへの関与という点でDgSや薬剤師の役割がクローズアップされてくる。それを支援するための情報ツールは不可欠であり、顧客データベースをチャネルを横断して一元化する必要があると考えている。