2025年、日配部門の売上利益最大化戦略!漬物・チーズ、米の代替提案に商機
原材料の高騰などから値上げ基調が続き、消費者の生活防衛意識が高まっている。こうしたなか、日配部門では流行や時機を機敏にとらえた商品政策(MD)を実行することがポイントとなる。
和日配、洋日配それぞれについて2025年の展望、方向性を確認したい。
和日配
米の代わりとなる「主食」の打ち出しを
2024年夏に起きたいわゆる「令和の米騒動」で、米が食品スーパー(SM)の店頭から消えたことは記憶に新しい。
猛暑による米の不作やインバウンドの増加による外食需要の伸長など理由はさまざまあるが、一言で言えば、長年保たれていた「需給バランス」が崩壊したことによるものだろう。


図表❶は、23年と24年における、新米が出回り出した10月の家計調査を比較したものである。米への支出金額は3483円と対前年同期比48.7%増と大幅に上昇しており、これは米の店頭販売価格の上昇幅とほぼ連動している。
ここから読み取れることは、米の価格はアップしているものの、それほど買い控えがなかったということだ。「とりあえず米は買っておこう」という消費者心理が働いたのかもしれない。
一方で、日配部門で扱う主食になりうる商品、たとえばパンや麺類、もちなどについては米と比べれば大きな伸びではない。乾うどん・そばは同30.2%増となったものの、もちは同2.9%増にとどまった。
ここで主食としての米の価格を考えてみよう。茶碗一杯分を精米約65gとし、米5㎏サイズ3500円で計算すると、3500円/5000g×65g=45.5円となる。
他方、日配部門の主食類の店頭価格を見てみると、3食分のゆでうどんは120円前後(1食あたり約30円)、そばは1食50円前後、蒸し焼きそばはソース付きで3食200円前後(同約66円)、食パン6枚切りは150円前後(同約25円)程度だ。
このように比較すると、パンや麺類が割安に見える。
さらに焼きそばやパスタは、副菜が必要となる米と違って単体で献立が成り立つため、1食分の費用が安価に抑えられる。うどんやそばも同様だ。
こうしたなか、農林水産省は令和6年10月期(令和7年3月まで)の輸入小麦の政府売渡価格について、令和6年4月期(同年9月まで)の平均買付価格と比較して1.8%引き下げることを発表した。これは小麦原料製品にとって追い風となるに違いない。
こうした状況下、日配部門で実施したいのが米に代わる主食商品の提案だ。日配部門はパンやうどん、そば、ラーメン、パスタ、焼きそばなど多くの主食商品を扱う部門である。主食である米の買い控えがないことからも、日配部門における主食を売り出す余地はまだあると考えられる。
先述したように、1食分の価格を提示するなど、麺類やパンなどの主食商品が米より割安であることを売場でうまく打ち出すことで、売上増につなげられるだろう。
「健康軸」で漬物の提案強化を
図表❷は13年と23年の発酵食品の家計支出額を比較したものである。和日配を見てみると、納豆は13年と比較して29.1%増と堅調であるが、「他の野菜の漬物」は同2.6%減と減少している。
しかし、漬物は食物繊維や植物性乳酸菌が豊富であることから注目を浴び始めており、25年は漬物の販売に力を入れてみてはどうだろうか。
漬物と一口に言っても日本にはさまざまな種類の漬物が存在し、大きく2つに分けられる。
1つは浅漬けやしょうゆ漬け(福神漬けなど)、酢漬け(らっきょうなど)、梅干しなど微生物の発酵を伴わない漬物、もう1つは長期の塩漬け(野沢菜など)、ぬか漬け(たくあんなど)、味噌漬け(なす漬けなど)、粕漬(奈良漬けなど)、からし漬け、もろみ漬けなど、乳酸菌を含む漬物である。
漬物は野菜の食物繊維が豊富であるうえに、後者には整腸作用がある植物性乳酸菌が加わるため、健康志向の消費者にうってつけの商品だ。

近年、漬物はFAO(国際連合食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)が01年の国際専門家会議で公表したとおり、「十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物」である「プロバイオティクス」を含むとされている。
そのほか、ヨーグルトなどに含まれる動物性乳酸菌よりも、漬物に含まれる植物性乳酸菌のほうが酸に強く、腸への到達率が高いとする報告もある。薬機法に注意しつつ、こうした情報をうまく活用し、健康に感度の高い層に向けて漬物を提案していくといいだろう。
また、食卓に出してすぐ食べられるようにした簡便性の高い漬物を打ち出したり、ベジタリアンやヴィーガンの消費者でも食べられることを売場でアピールするのも1つの手だ。
洋日配
多様なレシピ提案でチーズの売上を伸ばす
図表❷を見てみるとチーズは13年の家計支出額と比較して67.0%増と大きく伸長しており、洋日配全体をけん引するカテゴリーとなっている。
ただし、チーズの消費量が多いフランスと比べると、消費重量ベースでは10分の1から12分の1程度に過ぎないとも言われており、日本における消費量はまだ伸びしろがある。

日本ではもともとプロセスチーズが主流で、ナチュラルチーズを食べる文化が根付いたのはごく最近のように思う。「ナチュラルチーズはワインと合わせるもの」という固定観念にとらわれている消費者も少なくないのではないか。
そこで、ナチュラルチーズの幅広い使い方を売場で訴求することで、売上をさらに伸ばしていきたい。
たとえば、ナチュラルチーズを使った料理の代表格である「チーズフォンデュ」を提案する。エメンタールチーズとグリュイエールチーズを小麦粉や白ワインで伸ばしたものに具材をつけて食べるものだが、カマンベールチーズやゴーダチーズを足してもいいだろう。
「チーズフォンデュセット」などのキット商品も販売されているが、家庭で一からつくる本格メニューとして、チーズ売場で提案してみることをおすすめする。
また、パスタソースとして活用することを提案してみるのも一案だ。たとえば青カビチーズの一種であるゴルゴンゾーラを主役にしたソースだ。
つくり方は簡単で、ゴルゴンゾーラのなかでも刺激の強い「ピカンテ」に生クリーム、バターなどを混ぜ、ペンネやスパゲティに合わせて食べると本格的な味わいになる。
ピザにもこうしたゴルゴンゾーラをはじめとした青カビチーズはよく使用されており、生地にのせて焼いた後にはちみつをかけて食べると風味がよい。カマンベールのような白カビ系チーズを使用してもいいだろう。
洋日配ではこのように、チーズを使用した多種多様なメニューを提案していくことをおすすめする。こうしたメニューが家庭で定番化すると、チーズの消費量は一気に拡大し、売上伸長に貢献するはずだ。
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