挑戦から生まれるロングセラーブランドの魅力
人流の回復などアフターコロナに向けて消費動向が変わってきているなか、小売業界の市場動向を分析してみると、この数年ロングセラー商品の売上構成比が高まり続けていることがわかった。ロングセラー商品がどのように顧客の支持を集め成長を続けているのか、どのような戦略を持っているのか、ブランドの歴史と魅力に注目してみた。
人流回復による市場への影響
コロナ禍によりさまざまな行動が制限されライフスタイルも大きく変化したが、ようやくアフターコロナに向けて世の中が変わり始めてきた。2022年の1月-3月の人流はコロナ禍前の2019年の同期間と比較すると10%以上少なかったが、2023年は5%前後とコロナ禍前の人流まで回復しつつある。
この流れがスーパーの売上にどのような影響を与えているのか、カテゴリー別の動きを【図1】にまとめた。面のグラフは食品全体の12カ月移動平均の指数推移で、2023年2月時点では2019年比101.9%となっている。野菜、肉、魚といった手づくり素材が21年2月をピークに減少傾向にあるのに対し、冷凍食品やレトルト食品、惣菜といった即食品は売上を伸ばしてきている。アフターコロナに向けて消費動向が変化してきているなか、ロングセラー商品の動向、魅力について見ていきたい。
ロングセラー商品は好調に推移
ロングセラーの定義にはいろいろあると思うが、10年以上の販売実績がある商品をロングセラーとした時、果たしてどれぐらいの商品がロングセラーとして生き残ることができるのだろうか?KSPPOS(食品スーパー)によると2012年に登録があった食品の新商品は68,918品で、この中で2022年も販売実績がある商品は10,241品と14.9%の商品しか残っておらず、発売初年度の倍以上の売上になっているのは4,916品とわずか7.1%まで減ってしまっている【図2】。
しかし、生活者の厳しい目に耐えて残った商品だけあって2010年以前に発売された商品の販売店での数量PI値は全体平均の約1.4倍も売れている。10年以上売場にあり続けることにより、そのブランドに対する認知度や安心感が高まり、結果として手に取ってもらいやすく、定期的に購入され続けることがロングセラー商品の強みと言える。
とはいえ、さまざまな新商品や食トレンドの新しい波が押し寄せるなか、ロングセラー商品は食品全体の売上に対しどれぐらいの構成比を占めているのか?そしてその推移はどうなっているのだろうか?【図3】でロングセラー商品の構成比を見てみると、2017年は29.6%ほどだったのが年々増加し37.4%まで上がってきている。なぜこのようにロングセラー商品の売上構成比が高まってきているのだろうか?
KSP-POS(食品スーパー)によると、コロナ禍前の2017年から2019年は年間平均で55,294品の新商品の登録があったが、2020年から2022年は47,697品とコロナ禍前と比べると新商品の発売が9割程度に減っており、このような点も一因として考えられるが、売上や利用状況を分析してみると支持されているロングセラーブランドこそ挑戦的であり常に生活者のニーズや嗜好の変化をとらえ、リニューアルやシリーズ商品を発売しながら成長を続けている姿が見られた。