スーパー店頭で「幻の地酒」が売られ始めた理由と若年層が自宅でワインを飲み始めた理由

解説・文:吉田 和司(SBS/SAKETIME代表取締役社長)
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コロナ禍では“家飲み”需要の高まりもあって、食品スーパー(SM)の酒類部門は全体的に好調に推移している。ただ、酒類部門の積年の課題となっていたのが、売場や品揃えの「同質化」である。コロナ禍での消費動向の変化を契機に、本当にお客が求める酒類売場づくりを再考するフェーズに入っている。酒類市場の足元の動向と注目すべきトレンド、各カテゴリーでの販促の方向性について解説する。

超寡占化市場で売場・商品が同質化

 まずは足元の酒類市場の概況について見ておきたい。2019年の酒類の市場規模はメーカー出荷金額ベースで約3 兆4000億円とされており、うちビールメーカー4社の酒類事業の売上合計が約2兆3000億円で68%程度のシェアを有している(SBS調べ)。さらにいくつかの大手メーカーの売上を加えれば80%に迫るほどの寡占化市場である。

 したがって、どこの小売店舗でも同じようなものを販売していることになり、それゆえに当たり前のように「価格競争」に陥る。だから、「酒は儲からない」と誰もが嘆くのだ。逆に言えば自社、自店の酒類部門が儲からないのは、どこにあるような店でも置いてあるようなものを同じように陳列し、同じような販促物をつけて、同じような価格をつけて販売しているからである。

 酒類のMDを考えるうえでは、ほとんどの商品がどの店にも並んでいて、ほとんどの売れ筋商品がほかの店でも売れ筋であるという事実をきちんと捉えておかないといけない。そのうえで、そうした同質化競争を勝ち抜くためには、バイヤーや店舗の戦略や提案方法でオリジナリティを打ち出す必要があるのだ。

 酒類業界で高いシェアを持つビールメーカーなどが提案する企画書はとても優れているが、画一的な企画の可能性が高い。それではまた価格競争を生んでしまうので、優れた提案でも自社、自店に合わせたカスタマイズが重要だ。

 ここでお伝えする内容から、少しでも自社、自店の競争力強化、酒類部門の収益性や顧客満足向上につながるような施策を企画していただきたい。

小売量販は好調ワインの単価アップが顕著に

 コロナ禍の酒類市場は、業務用市場が大きな打撃を受けた一方、

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