ニューノーマルにより行動も価値観も変化=2020年秋冬 注目マーケティングトレンド

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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コロナによって価値観に変化物質的から精神的な充足感へ

中長期的に生活者の「意識」「行動」変化が大きく変わるきっかけに

── 緊急事態宣言が解除されてから、消費動向に変化はあったでしょうか?

小山 どういうスパンで見るかにもよるのですが、社会環境的には国内外の経済が悪化しているので、否が応でも節約志向は出ています。ただ、宣言が解除されたとはいえ、外出やイベントにはまだ制限があるため、極端な言い方になりますが、食べることしか楽しみがない。食べるものぐらいはいいものを食べたい。おいしいものを食べたい。食べてホッとしたい。そんな欲求が出てきます。つまり、食がもつ本質的な価値があぶり出されてくる。食に求める楽しみがこの先グッと上がることは間違いありません。

 家で食べる内食化の傾向はこのまま続き、全てがコロナ前の状態に戻ることはないでしょう。一方で、家事の負担が増えるため、家事の分担傾向やテイクアウトのニーズが高まったり、味の変化を求めたりなど、いろんなニーズが出てくると思います。在宅の浸透や健康意識の向上、人との繋がりの再確認、社会貢献への高まりなどを背景に、生活者の意識や行動は大きく変わってきています。その根底には、本質志向や生活防衛志向、家の中で楽しもうといった価値観があります。そうなると、この先売れるものは、そうした価値観に紐付くものではないかと考えています。

── コロナによって価値観が変わり、それにつながる商品が今後売れるのではないかということですね?

小山 はい。ただ、価値観は今後も変わる可能性もあります。現在の制限がもう少し緩和されれば、また違ってくるだろうし、第2波が来れば、節約志向がもっと高まるでしょう。しかしながら、節約志向とこだわり志向のように、相反する志向がメリハリをもたせながら共存するのではないでしょうか。ラグジュアリーではないけれど、シンプルでいいものを選ぶといった具合に。物質的な欲求から精神的な充足感へのシフトが進むと思いますね。

 当社では生活者調査を長年行っているのですが、以前からその傾向はありました。コロナによってそれが鮮明になってきた感はありますね。自粛という抑圧の中で、ほかに楽しみがないからこそ、食に求めるものが多くなり、それらと価値観が相互に絡み合って購買行動に出てくるのではないかと思います。

新生活様式に合わせた売場やプロモーションの再構築を

── 今後、秋冬の売場づくりにおけるポイントは何でしょうか?

小山 5月に新しい生活様式が公表されましたが、これが根付いた場合、生活者の購買行動はどうなるか? 当社ではいち早くオンラインブレストを行い、売場づくりのポイントをまとめました。

 まず、生活者の意識や行動をキーワードとして挙げ、「テレワーク」「行楽・イベント」「料理」「健康」「おうち時間」というカテゴリーに分類。これに意識や行動の変化のキーワード、「心とカラダの健康」「人との繋がり」「食育」「節約」「働き方」「イエナカ・近圏」「国産品志向」を絡めて、注目すべき切り口・系統の商品をピックアップしてみました。

 たとえば、「テレワーク」×「働き方」・「心とカラダの健康」という切り口であれば、「在宅ワークのQOLを上げましょう!」をテーマに、ワンハンド飯や集中力アップの商品などを揃えてはどうかと提案しています。

 また、オリンピックが延期になって、計画していた販促ができない今、どんなかたちで何を消費者に訴求できるかを整理。「行楽・イベント」×「イエナカ・近圏」・「国産品志向」という切り口で、「ふるさと需要・エア旅行・自粛ご褒美提案で地域の食品メーカーを応援しよう!」をテーマに、お取り寄せグルメ展を開催してはどうかと提案しています。

 さらに、商品だけでなく、店舗の在り方についても言及。感染症対策を変化のチャンスととらえ、店舗全体でできる新たなサービスに取り組んでみてはどうかと提案しています。

── 新しい生活様式に合わせて、どんなふうに店舗は変わるべきでしょうか?

小山 新生活様式によって変化した購買行動に対し、新たな店舗フォーマットが求められています。今回、ホットケーキミックスなど粉物系の欠品が続きましたが、実はこれは近年縮小されてきたカテゴリーです。「手づくりする人は少しずつ減少していく」といわれ、より簡便にという流れの中で総菜が増えた。しかし、コロナの影響でその流れが大きく変わった。「つくる」ことへの価値を初めて味わったり、思い出したり。この流れを絶やさず、提案していくべきだろうと思います。そういう意味で、売場構成比や棚割等も見直した方が良いかもしれません。プロモーションも然りです。必要に応じてネットやIT技術を活用し、リアル店舗ならではの利点を生かしたプロモーションを考えるべきでしょう。そうすることで、真に生活者に寄り添った店として支持されていくと思います。

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