持続可能な農業の実現へ JAグループ福島が挑む「GAP認証野菜」の販路拡大
県独自の「FGAP」で風評被害の払拭へ
福島県がGAPに対し積極的に取り組んでいる背景には、2011年に発生した東日本大震災とそれに伴う原発事故がある。震災後、県産農畜産物は深刻な風評被害を受け、農産物の安全性を裏付ける科学的な仕組みが必要不可欠となった。福島県では震災前の06年にGAP推進方針を策定し準備を進めていたが、震災の発生を受けて13年に改定した。
その後、17年には、県とJA福島中央会が共同で「ふくしま。GAPチャレンジ宣言」を発表。同宣言では「福島県をGAP先進県に」を掲げ、GAPの取り組みをさらに推進していく方針を掲げた。また、東京オリンピック・パラリンピック2020で県産品を供給し、生産者の誇りと消費者からの信頼を取り戻すことを具体的な目標に設定した。
同じ年に創設したのが、県独自の「FGAP」だ。頭の「F」は福島県を意味している。このFGAPは、国際水準のGAPが定める食品安全・環境保全・労働安全に加え、「放射性物質検査を組み込んだ安全確認」が特徴だ。
FGAPは、25年3月末時点で県内約800の農場が取得しており、青果・穀物では全国トップの実績を誇るという。FGAPは単なる品質保証の枠を超え、「信頼の再構築」を担う仕組みとして機能しており、福島県は前述の宣言通り「GAP先進県」としての側面を強くしていると言えるだろう。
FGAPをはじめとする認証は、消費者に「安全性の見える化」を提供すると同時に、流通業者にとっては「安定供給の保証」として活用できる。単に仕入れ基準を満たすだけでなく、消費者に対して「科学的に証明された安全性」と「持続可能な生産体制」を訴求できるため、小売にとっての意義も大きい。
認証制度は産地と実需の信頼関係を支える仕組みであり、小売にとっては差別化の武器ともなりうる。福島発のFGAPをはじめとした持続的な農業の取り組みは、今後のサプライチェーン全体にとって重要な意味を持ち続けるだろう。







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