歴史を紐解けばヒットの要因がわかる! 連載:深掘りすれば見えてくるチューハイ編
今後も市場は好調の見込みアルコール度数で選ぶ時代に
「キリン氷結®」に対抗して登場したのが、サントリーの「-196℃」だ。中でも09年にアルコール度数9%の「-196℃ ストロングゼロ」が発売されると、主戦場は高アルコールのストロング系に舞台を移す。背景には08年のリーマンショックに端を発する節約志向がある。1本で酔えるストロング系チューハイはコストパフォーマンスがよいからだ。時を同じくしてウイスキーハイボールが外食シーンに登場。家飲み需要が高まると、ハイボール缶や缶チューハイが続々と発売され、RTD市場は活況を呈する。14年頃からは二ケタ成長が続き、シュリンクする酒類市場の中でまさに一人勝ちだ。
「2015年頃に新ジャンル市場が飽和感を来たし、魅力を感じなくなったユーザーが流入してきた結果です。チューハイのユーザーは新商品が出ると『飲んでみたい!』と手に取る傾向にあり、期間限定品はとくに人気が高い。流通側も売れ残りのリスクが少なく数字が読めるため、力を入れるようになります。結果、好循環が生まれて伸長が続いています」(山田氏)。
ここ数年は客数だけでなく、6缶パックや500ml缶を購入するロイヤルカスタマーも増え、客単価が上昇。また、アルコール度数6%前後のものが復活し、シェアを伸ばしている。
「食中酒としてチューハイを飲む人が多いため、ストロング系ではつい飲み過ぎてしまう。味に満足するなら6%ぐらいでいいよね、と使い分けし始めたということでしょう。昨年、コカ・コーラが『檸檬堂』を発売してヒットしましたが、これは同一ブランドの中で“アルコール度数で選ぶ”という新発想。受け入れられたことは興味深いですね」(山田氏)。
さて気になる今後だが、10月の酒税改正でも増税のないチューハイは好調が続くと予想されている。では、レモンサワーに代わるプレイヤーは出てくるのか? 山田氏によれば、酒場の業態でハマるものが広がればその可能性はあるという。ただし、定着するには“それ”でなければならない理由が必要とか。果たして、どうなる?
缶チューハイのパイオニア「タカラcanチューハイ」
発売から36年目を迎え、今なお人気を誇る宝酒造の「タカラcanチューハイ」。焼酎ブームが巻き起こった1980年代、居酒屋で話題のチューハイを家庭でも楽しめたら…。そんな想いから史上初の缶チューハイ開発がスタートした。まず技術者たちが行ったことは、全国各地の居酒屋を飲み歩いてリサーチすること。ようやく再現したいと思える味に出合うと、なんとそのチューハイには自社の人気焼酎「純」を使っていた! 試行錯誤の末にようやくたどり着いた味わいを大々的に宣伝したいと、パッケージデザインにも注力。今までにない斬新なものにしたいと考え、グラフィックデザイナーの巨匠、松永真氏に依頼した。それが現在のパッケージデザインだ。発売以来、ほとんど変わっておらず、今でもスタイリッシュなデザインで、輝きを放っている。