小売業にも商機あり? 女性の健康課題を解決する新トレンド「フェムテック」とは
更年期から老年期の女性に寄り添う!
フェムテックという言葉が日本で一般的に認知され始めたころ、まず注目を集めたのは、吸水ショーツだった。これは本体に吸水性があり、洗濯することで繰り返し使用することができるサステナブルな生理アイテムだ。ファストファッションブランドが次々に手ごろな価格で吸水ショーツの取り扱いを始めたのをきっかけに、一気に知名度が高まった。
一方でフェルマータの店頭では、「安価な吸水ショーツを試したが、自分には合わなかったので高品質なものを求めて来店した」という声も少なくなかったという。「フェムテックに触れる入り口として、リーズナブルな商品の存在はありがたいが、より快適に長く使い続けてもらうためには、売価が上がったとしても高品質な商材を手に取ってもらう必要がある」と森本氏は話す。
吸水ショーツの次に注目を集めたのは、医療用シリコンを使用した月経カップ。同商品は、折りたたんで挿入し、膣内で広げたカップに経血をためて使用する生理用品だ。適切な手入れをすれば数年繰り返し使えるものも。経血が空気に触れないため月経特有の臭いや、カブれなども気になりにくい。正しく装着すれば経血が流れ出てくることはないので、プールや温泉などのレジャーでも活躍するほか、ナプキンに比べ連続装着時間が長いのもメリットだ。
月経カップは月経中に手で膣内にカップを挿入する必要があるため、スムーズに装着するコツや、正しい装着位置、外出先で快適に経血を捨てる方法などの知識が不可欠となる。それらの情報や、圧倒的な使用感の快適さが口コミやメディアで認知されるにつれて、手に取る人が増えているという。
このほかにじわじわと人気を集めているのが、「骨盤底筋訓練器具」という一般医療機器として届出された「ケーゲルベル」だ。産後や更年期を迎えて緩みがちになる骨盤底筋を鍛え、尿漏れ改善をサポートするアイテムだ。これまで雑貨扱いだった商材だったが、一般医療機器として届出することで「尿漏れ(腹圧性失禁症)」にアプローチできると記載できるようになった。
「当初は『なってしまったものをフォローする』という目的で吸水ショーツが売れていたが、健康ブームの高まりとともに、尿漏れを『予防する』という思考に変化しつつある」と森本氏は話す。さらに比較的、経済的に余裕のある更年期〜老年期の女性にシェアが広がることで、より高品質で付け心地の良い商材の需要も高まっている。
「ケーゲルベルは“尿漏れ改善をサポートする”という訴求ができる商品。サイト上でこのように記載した瞬間に売れるようになった。雑貨というカテゴリーだと伝えられることが少ないが、効果を具体的に打ち出すことによって、お客様自身の悩みとリンクしやすくなるため、購入につながるケースが増える」(森本氏)
フェムテック製品は新しい価値観を内包するモノも多いため、広告表現などの規制やルールが整備されきっていない。いかにお客に安全なものをわかりやすく伝えて届けるかが今後の課題だ。また、まだ店頭で手に取りにくいと感じるお客に対して、購入しやすい導線を整えることも必要だと森本氏は説明する。