米国ハードディスカウンター2024 絶好調アルディがレジレス店も実験

文:平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
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コロナ後の物価高騰下で、米国では「ワン・パーセンター(全人口の1%程度しか存在しない高所得者)」と呼ばれる人々までもがウォルマート(Walmart)、さらにはハードディスカウンターまで“下って”食品を購入するという動きが話題になった。インフレのピークを過ぎた現在もこの傾向は変わっていない。ハードディスカウンターの代表格であるアルディ(Aldi)にとっては快進撃の追い風が吹く一方、同業のリドル(Lidl)は地道な市場開拓を続けながらブレークスルーを探しているようだ。2社それぞれの現状と戦略をまとめる。

アルディ
期間限定値下げを実施、店舗数は全米2位に

 アルディは5月2日、250アイテムを7月10日までの期間限定で値下げし、総額1億ドル相当を消費者に還元すると発表した。アイテムの多くはスナックや缶詰、瓶詰などの加工食品だが、「アンガスサーロインステーキ」が1ポンド当たり8.49ドルから6.99ドルへ、BBQの定番の味付き豚肉・鶏肉がそれぞれ7.49ドルから6.99ドルへと、生鮮食品の一部も値引き対象とした。

 これに対抗するかのように、ターゲット(Target)も5月20日にプライベートブランド(PB)「グッド&ギャザー」を中心に約5000アイテムを夏の間値下げすることを発表。ウォルマートは4月30日、食品では20年ぶりとなる新PB「ベターグッズ」を立ち上げ、安価ながら植物由来素材や健康志向を前面に出した300アイテムを投入した。ターゲットやウォルマートの動きからは、インフレ下でさらに追い風に乗るアルディをいかに脅威と見ているかがうかがい知れる。

アルディ外観
アルディは長引くインフレを追い風に全米で出店を加速している

 アルディは出店も積極化している。23年8月には、フロリダ州本拠のサウスイースタン・グローサーズ(South eastern Grocers)から「ウィンディキシー(Winn-Dixie)」「ハーヴィーズ(Harveys)」など400店舗を買収。これにより米国内の店舗数は2300超となり、食品スーパー(SM)としては2位アルバートソンズ(Albertsons)を抜き、首位クローガー(Kroger)に迫る勢いとなっている。今年3月には28年末までに800店舗の追加出店計画を発表しており、数年以内に店舗数ではクローガーも追い抜くことは確実だ。

 アルディが出店を急ぐのは、前述のような消費マインドの追い風が吹くなかで、米国SM業界での確固たる地位を築くためだ。クローガーの記事図表❶でも示したとおり、売上シェアでアルディはクローガーの約3分の1に過ぎない。しかし商品の80%以上がPBであるアルディが、価格リーダーシップだけでなく規模の経済によって米国での収益力も高めていけば、SM業界への影響は大きい。

顧客層拡大し、社会的イメージも変化

 さらに、アルディが店舗網を広げるなかで、米国社会における同社に対するイメージも変化しつつある。

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平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

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