米価の値頃は今3000円台? 「価格はお客さまが決める」の真理

宮川 耕平(日本食糧新聞社)

値ごろ感は価値観によっても変わる

 食品全般の値頃感について「価格はお客さまが決めるもの」と言及したのは、イオン(千葉県)の吉田昭夫社長です。顧客が期待する値ごろ感に応えられなければ「そのお店は支持されなくなるのが実態」(吉田社長)なので、顧客の価格ニーズに対応するためにPB「トップバリュ ベストプライス」の展開を強化しているというわけです。

 ナショナルブランド(NB)の価格上昇も追い風に、24年度はトップバリュ全体で1兆983億円(8.3%増)を売り上げました。25年度は1兆2000億円をめざします。

 ただ、トップバリュの拡大は低価格だけが要因ではありません。MZ世代(概ね20~30代)や、「トップバリュ グリーンアイ」の購入者、季節催事を楽しみたい生活者など、ターゲットに応じた価値を提供し、支持された以上はそこに値ごろ感も伴っていたはずです。

 多様化した価値、すなわち価値観の違いは、値ごろ感の尺度も変えます。例えば、ビールは糖質オフと決めている人は、たとえNo.1 NBの方が安くても糖質オフを選ぶでしょう。うちの場合、バナナはオーガニックしか購入しないので(オーガニックを選ぶにしてはくだらない理由があるのです)、そうじゃないバナナがどれだけ安くても選択肢になりません。とはいえ、オーガニックバナナであれば最も安い店を選びます。正確にいえば、生活圏にある最も高い店では買いません。

価格以外の価値軸を持つ商品は値ごろ感も独自の尺度に

 ライフの岩崎社長は、同社のナチュラル志向のPB「ビオラル」に関して、景況感に左右されにくいブランドであると言及しました。

 「ビオラルを購入されるお客さまは健康志向・環境意識が高く、そのような方たちにとって景気の波が大きなマイナス要因になるとは思いません。また、そういうコンセプトの商品の中では価格競争力のある値付けをしています」(岩崎社長)

 確かにライフは、うちのバナナ購入先の選択肢の1つです。

 全般的に価格は上昇しており、米のように1年で大違いなケースもあります。それでも商品価値を認めるなら、価格の妥当性は変化せざるを得ません。とはいえ、価値が同等であれば顧客は価格を比較するので、「価格はお客さまが決めるもの」と経営者が言及するのは妥当なことです。むしろ妥当でないのは、過去と比べて上がった・下がったと話題にすることかもしれません。以前の価格で買えない以上、問題は今そこにある価格だけです。

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